【保存版】学会発表7ステップ《実践編》|統計が苦手な医療職・コメディカルが「初めてでも大丈夫だった」と言えるまで


🟦 はじめに:その不安、よくわかります

来年の学会発表お願いね!

いきなりの無茶振り…。

  • 「研究なんてやったことない」
  • 「そもそも学会って何するの?」
  • 「統計とか全然わかんない」

そんな気持ち、私も痛いほどわかります。

私自身も最初は、「倫理審査って何?」という状態から始まり、誰にも聞けずに孤独と絶望に押しつぶされそうでした。

この記事では、そんな経験を踏まえながら、

"7つのステップで、初学者でも学会発表が現実になる"

ことをめざし、さらに実践的な内容を追加しました。

✅いきなり学会発表を振られて困っているあなたに向けた記事になります。

統計解析についても、具体的にご説明いたしますので、ご安心ください。

最初の一歩を踏み出すための道しるべになれば幸いです。


🟦 Step1. テーマを絞る(全部は語れない)

どんな研究をするのか方向性を決めていきます。
あれもこれも言いたくなる気持ちもわかりますが、ここではとにかく絞りに絞っていくことが肝心です。

言いたいことはたった1つに絞ります。

方向性を決めるために有用な方法を以下に書いていきます。
  • 同じ職場の過去の参加者にどんなことをやったのか聞く

  • 去年の学会抄録集を読んで、同じ職種の人の研究を見る

  • 日々感じている疑問を洗い出す

実は研究テーマって、特別なアイデアではなく、「日々の疑問」から生まれるものです。

たとえば…

- 「シャント管理が上手な人ってどういう傾向があるんだろう?」
- 「外来通院を難しくする要因に早めに気づけないのかな?」
- 「この患者さんたち、なぜこんなに筋力低下しているんだろう?」


「こんなテーマでいいの?」と思うかもしれませんが、実はそういう身近な疑問こそ、発表に向いています。
  • 「これは伝えたい!」と思える1つに絞る(複数あるなら一番“患者さんの変化”が見えた事例)

  • 実践報告なら、成功だけでなく「試行錯誤したこと」「乗り越えた工夫」も価値あり

  • 絞れないときは、信頼できる先輩や上司に「どっちが学会向きか」聞く

📌 意識すること:「完璧な研究」より「臨床から生まれた問い」


🟦 Step2. 倫理審査と研究計画(最大の壁)

テーマが決まってホッとしたのも束の間、「倫理審査」「研究計画」という、最大の壁がやってきます。
どちらも初学者には聞き慣れない言葉ですが、実は、しっかり順を追えば必ずクリアできます。

倫理審査

少し身構えてしまいがちですが、病院ごとに手順は整っています。

もし所属機関に倫理審査委員会がない場合、学会によっては手助けしてもらえます。
例えば、日本看護学会の場合、ホームページに以下のような記載があります。

第2条
研究倫理審査は、会員の所属施設等に研究倫理審査委員会がない場合、あるいは看護研究を扱っていない場合で、正会員が主たる研究者である研究に限って審査対象となる。 


いずれにしても、わからないことは、「先輩、上司に早めに相談」するのがポイントです。

同意書を取るなら、早めに取りはじめないと、データ集めの期間が短くなってしまいます。

わたしの病院では総務が倫理審査委員会を担当していたので、ある程度テーマが決まったあとにメールで確認を取りました。

📄倫理審査で提出を求められた資料(例:筆者の病院)
提出書類内容のポイント
① 申請書倫理審査そのものの申請
② 研究計画書実施内容の詳細
③ 説明・同意文書研究参加者に配布する資料

2番の研究計画書を記載するにあたり、研究計画をまとめる必要があります。
記載方法は職場のテンプレートに従うとして、おおむね以下の情報が必要です。

✏️研究計画書に含めるべき情報(たたき台)

研究計画書は、一般的に以下の構成で求められることが多いです。


【研究計画書に含める内容(例)】

研究課題(タイトル)

 簡潔で、研究内容がわかるタイトル

背景と目的

 ・なぜこの研究をするのか
 ・先行研究との関係(ざっくりでOK)
 ・この研究で何を明らかにしたいのか

研究方法

 ・研究対象(患者さん、利用者さん、施設など)
 ・対象者の選定基準・除外基準
 ・データ収集方法(アンケート?観察?電子カルテ?)
 ・分析方法(t検定?クロス集計?記述統計だけ?)

倫理的配慮

 ・匿名性・個人情報保護の方法
 ・インフォームド・コンセントの取得方法
 ・不利益が起きないような配慮

研究スケジュール(ざっくりでもOK)

 例:2025年8月 倫理審査通過 → 9月〜10月 データ収集 → 11月 分析 → 12月 発表

利益相反(COI)

 ・研究に関して金銭的支援や利害関係がある場合は記載


🟦 Step3. データ収集とまとめ方(テンプレ)

データ収集には大きく分けて「実測」と「カルテ情報」の2つがあります。

**実測の特徴**  
- メリット:目的に合ったデータを取れる  
- デメリット:時間・手間がかかる、同意取得が必要なことが多い

**カルテ情報の特徴**  
- メリット:すでにあるデータを使える  
- デメリット:記録が不正確な場合もある、条件に制限あり

どちらが良いというより、「何を調べたいか」で選ぶことが大切です。

取ったデータをエクセルにまとめます。
次のStep4.で説明する統計解析ソフトが読み込める形式にすることが重要。


画像のように

✅縦:各個人のデータを列挙する
✅横:項目を列挙する

このようにまとめることで、統計解析ソフトのEZRに読み込ませることができるようになります。

詳しくは、後日アップする『EZRに読み込ませるためのExcelのまとめ方』記事にてご説明いたします。

🚫データをまとめた後に、平均値などをセルの下に入れるのは禁止です。各個人のデータのみ入力してください。


🟦 Step4. 統計解析(安心安全のEZR)

統計解析は「EZR(無料)」を使用します。

🔽EZRの使い方は下記の記事に詳しく書いています。
  


🟦 Step5. 抄録の構成と提出スケジュール(〆切厳守)

学会発表には、「発表抄録(アブストラクト)」の提出が必要です。

構成は多くの学会で以下の型が使われます:

- 【目的】
- 【方法】
- 【結果】
- 【考察】
- 【結論】

最初は難しく感じますが、過去の抄録集を読むことで、書き方のコツがつかめます。
過去の抄録集が職場にある場合はそれを読めばOKです。
ない場合は学会のホームページで公開されていることも多いので、確認してみましょう。

抄録は締切が早いことも多いので、スケジュールには要注意です!


🟦 Step6. スライドと発表原稿の準備(文字を減らす勇気)

抄録の提出が終わったら、いよいよ本番に向けての準備が始まります。

発表用のスライドと原稿作成です。

スライドは:

- 1枚1メッセージ
 ✔️伝えたいことは絞るように

- 文字を詰め込みすぎない
 ✔️読ませないように

- 説明がなくても「伝わる」デザインに
 ✔️見てわかるように


🟦 Step7. 練習&本番(緊張は味方に)

発表の前には、練習がオススメ。
練習は本番での再現性を高めてくれます。

- タイマーで時間を測る(ゆっくり話す)
- 職場で練習会があれば参加する(ここで質問対策ができる)
- パソコン操作にも慣れておく(本番は指が震えて誤クリックが多発します💦)

読む速さは、1分で1~2スライド。
本番はだいたいの人が早口になるので、ゆっくり話す練習を積んでおきましょう。

また、本番で原稿を読むのはあまりオススメしません。
原稿の内容をしっかり頭に叩き込みましょう。

想定外のトラブルもあるので、「予備のUSB」や「印刷した原稿」など、持ち物も確認しておきましょう。
事前にウェブでスライドを登録するシステムなら問題ありませんが、現地で登録する場合、USBを無くしたとか壊したとかも有り得るので、「予備のUSB」に加え、データをクラウドに保存しておくこともオススメです。

(別記事:「学会当日の持ち物チェックリスト」にリンク予定)


🟦よくある不安と対処法(Q&A)

Q. データが少ないとダメですか? 
A. 大丈夫です。1症例報告でも「意味ある気づき」があれば価値あり。

Q. 解析の結果、有意差が出なかったんですけど?
A. 学会発表は有意差を出すことが目的ではありません。有意差が出なかったら、なぜ出なかったのか考察することに意義があります。また、仮説通り有意差が出なかったのか、仮説に反して有意差が出なかったのかでも、大きく違ってきます。いずれにしても、考察し、今後に活かしていくことが大切ですので、目先の有意差に惑わされないようにしてください。

Q. 他職種との共同発表でもいいの? 
A. 1職種でできることは限られています。例えば、栄養と運動を組み合わせてみる。多職種連携の視点は学会でも注目されます。

Q. 発表後に質問が来るのが怖い… 
A. です。質問されるということは、それだけ内容が伝わったということです。それだけ素晴らしい発表をしたということ。何言ってるのかわからなかったら質問しようがありません。最悪なのは関心を持たれないことです。ここは発想の転換が必要です。ある程度質問の内容を予測しておきましょう。通になると、あえて発表に穴を作っておいて、そこに質問が来るよう誘導します。


🟦 おわりに:あなたの一歩を応援しています

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

私も最初はまったくわからず、失敗もたくさんしてきました。
でも、小さな疑問を形にしていく楽しさに気づいてからは、発表が「ちょっと楽しいもの」に変わりました。

このブログでは、今後も統計解析の方法(EZRの使い方)や抄録のコツなど、実践的な内容を発信していきます。
一緒に、少しずつ前に進んでいきましょう!

応援しています!

運営者プロフィール

本サイト「理学療法士かずの評価と統計のやさしい処方箋」は、理学療法士かずが運営しています。
臨床経験を生かしつつ、学会発表や統計の学びに役立つ記事を執筆しています。
「難しそう…」を「やってみよう!」に変えるきっかけをお届けします。


※当サイトで紹介している学会発表の手順・構成・テンプレートは、筆者のこれまでの経験に基づいた一例です。
※学会ごとに求められる形式や審査基準、演題登録のルールは異なるため、必ず所属機関や主催学会の公式情報をご確認ください。
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