自転車エルゴメータでワット(Watt)からメッツ(METs)を換算する方法(その逆も)
こんにちは。
理学療法士の「わい爺」と申します。
自転車こぎ運動(自転車エルゴメータ)をするときに、ワット(Watt)数の設定ってどうしたらいいの?って悩みますよね。
何ワットの運動だったら、患者さん・利用者さんに望ましい負荷がかかるのでしょうか。
運動負荷を決めるときの「あるある」ではないかと思います。
私の職場に、「仰向けのまま自転車こぎ運動ができる機械」が導入されたのですが、ワット数は設定できるものの、メッツ(METs)がわからないので、どれくらいのワット数から始めてもらえばよいのか悩みました。
実際、臨床では一番低いワット数から始めて、ご本人の感想(自覚的運動強度と言います)を聞きながら設定していくこともあります。
それはそうなのですが、例えば、社交ダンスができる体力をつけたいと言われた場合、何ワットの運動が望ましいでしょうか?患者さんや利用者さんの目標が達成できるような負荷をかけたい場合、やはり理屈は知っておきたいところです。
ネットで調べても、なんだかいまいちピンときません。
わかったような、わからないような。
そこで今回の記事では、
- 私でも理解できた道筋を示し、
- ワット(Watt)数からメッツ(METs)を推定する換算表をGoogleスプレッドシートで作成したので公開いたします。
読者の皆様のお役に立ちましたら幸いです。
ワット(Watt)数からメッツ(METs)を推定する考え方
まず、インターネットで論文や情報を検索しました。
有力な情報は以下の通りです。
①
森田義満,金子秀雄・他:維持血液透析患者における至適運動負荷量に関連する評価指標とその推定式,理学療法科学 34(6):833–837,2019
②
健康運動実践指導者養成用テキスト(第1版 第10刷),公益財団法人健康・体力づくり事業財団,平成28年3月
前提①
1メッツとは、3.5 (ml/kg/min) の酸素摂取量のこと。
- 1メッツ = 酸素摂取量 3.5
- 2メッツ = 酸素摂取量 7.0
- 3メッツ = 酸素摂取量 10.5
このことから、メッツは、酸素摂取量を3.5で割ると算出できることがわかりますね。
前提②
自転車こぎ運動(自転車エルゴメータ)の酸素摂取量は以下の式で求めます。
酸素摂取量(ml/kg/min)= 1.8 × 仕事率(kg×m/min)/ 体重(kg)+ 7
(1 watts=6.12 kg×m/min)
単位がごちゃついているとわかりにくいので、単位を除いて、わかりやすく書き換えます。
酸素摂取量 = 1.8 × 6.12 × ワット数 / 体重 + 7
もう1回おさらいしますが、酸素摂取量を3.5で割れば、メッツになります。
メッツ = 酸素摂取量 / 3.5
ということで、
メッツ =( 1.8 × 6.12 × ワット数 / 体重 + 7)/ 3.5
という式になります。
体重によって運動のきつさが変わりますので、事前に体重も調べておいてください。
換算表を作成しました
換算表は初期の状態では
- ワット数は、4ワット~200ワットまで(2きざみ)。
- 体重は、30kg~120kgまで(1kgきざみ)。
それ以上計算する場合はダウンロードの後、ドラッグで範囲を広げてください。
理論上、どこまででも伸ばすことは可能です。
▼ダウンロードは以下のリンクをクリックしてください
▼ご自身のGoogleドライブに保存する方法はこちらの記事をご覧ください。
以前に共有したSPPBを例にした記事ですが、方法は同じです。
換算表をもとに指導方法を考えていきましょう
例①体重70kgの方が20ワットの自転車こぎ運動をする場合
換算表を開きます。
換算表は上に体重、左にワット数が記載されています。
体重70kgの欄と、20ワットの欄が重なるところを見ます。
これによると、2.9メッツであることがわかりました。
もちろん、2.9メッツの負荷が、その方にとって適切かどうかは別に考える必要があります。
例②メッツからワットを推定する場合
患者さん・利用者さんにはどんな目標がありますか?
- どこどこまで歩く体力をつけたい
- 駅の階段を上れる体力をつけたい
- ゆっくりでいいので社交ダンスができる体力をつけたい
人によっていろいろな目標がありますよね。
次に、目標とする活動のメッツを調べます。
私はだいたいこの一覧表で調べています。
細かく載っているので、だいたいの活動のメッツがわかります。
▼外部リンク
今回は体重が50kgの方がゆっくりの社交ダンスがやりたいと希望したとします。
ゆっくりの社交ダンスは一覧表によると、3メッツです。
3メッツの活動ができる体力をつけたい = 3メッツの自転車こぎ運動をしていただくことに決まりました。
(もちろん、現在の体力に合わせて無理はしないようにお気を付けください。その方に合わせて、もっと弱い負荷から始めても構いません。)
換算表を開きます。
換算表は左にワット数、上に体重が記載されています。
体重が50kgの方が3メッツの自転車こぎ運動をする場合、16ワットに設定すればよいということになります。
ここからわかることは、この方に対して16ワット未満の自転車こぎ運動をいくら続けても、運動負荷としては少ないということです。
換算表は、このような使い方ができます。
ぜひご活用いただけたらと思います。
仰向けで行う自転車こぎ運動は?
私の職場で導入したのは、こちらです。
リンク
このエスカルゴⅢ(4ワットから20ワットの運動ができる)が1つ。
エスカルゴⅢより、さらに抵抗を重たくできるマシン(20ワットから70ワットの運動ができる)の計2台です。
どちらも仰向けの状態で行うことを前提として導入されました。
仰向けの状態のメッツは0.9です。
先程の換算表のメッツに0.9をかけると、仰向けで行う自転車こぎ運動のおおよそのメッツが求められます。
座って行うより、軽い運動になってしまいますが仕方ありません。
ご質問等ございましたら、お問い合わせよりお願いいたします。
ここから先はおさらいです。
メッツ(Mets)って何?
様々な活動がその何倍のエネルギーを消費するか示した活動強度の指標です。
もっと簡単に言うと、体を動かしたときに感じるきつさ(身体活動の強さ)を表しています。
英語にすると、metabolic equivalents。
安静に座っている状態=1メッツ。
これが基本です。
1メッツと言えば、座っている状態。
1メッツの酸素摂取量は3.5。
寝ている状態は0.9メッツ。(しつこい?)
メッツって何に使うの?
3メッツ以上の活動がオススメされています
2024年1月、厚生労働省は『健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023』を発表しました。
高齢者の身体活動量の推奨値は、「強度が3メッツ以上の身体活動を週15メッツ・時以上」。
これを簡単に説明すると、
- 3メッツ以上の活動を
- 週当たり5時間以上(1日40~45分)
行うことをオススメするというものです。
このオススメ量を達成できる高齢者は、ほとんど動かない高齢者と比べて、総死亡及び心血管疾患死亡のリスクが約30%程度低下することが示されています。
自転車こぎ運動を行う時も、無理でなければ3メッツ以上となるワット数で行うと、このオススメ量に加算することができます。
3メッツ以上の活動になるよう意識するというのはとても大切なことです。
成人の場合は、高齢者より推奨値が高くなります。
さらに、身体活動と運動を分けて考えなければなりません。
強度が3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上行うことを推奨する。
強度が3メッツ以上の運動を週4メッツ・時以上行うことを推奨する。
身体活動と運動を分けることに関して、この記事で説明するには本筋がずれていってしまいますので、この説明は違った形で行います。
いずれにしても重要なのは、成人であれ高齢者であれ、3メッツ以上の活動がオススメされているという点です。
消費カロリーが計算できます
消費カロリーを計算するときに、メッツを活用します。
消費カロリー (kcal) = メッツ × 体重 (kg) × 運動時間 × 1.05
※運動時間は、1時間なら「1」、30分なら30÷60で「0.5」になります。
20分なら20÷60で「0.333…」、15分なら15÷60で「0.25」。
換算表からメッツを推定し、上の式に入れることで、消費カロリーが簡単に計算できます。
上記の例②の方で考えます。
体重50kgの方が、3メッツの運動を30分行ったとします。
消費カロリー = 3 × 50 × 0.5 × 1.05 = 78.75 kcal となります。
このようにワットからメッツを推定し、消費カロリーの計算に使うこともできます。
参考になりましたら幸いです。
▼参考になりましたらクリックお願いいたします
参考・引用論文サイト
①
森田義満,金子秀雄・他:維持血液透析患者における至適運動負荷量に関連する評価指標とその推定式,理学療法科学 34(6):833–837,2019
②
健康運動実践指導者養成用テキスト(第1版 第10刷),公益財団法人健康・体力づくり事業財団,平成28年3月
③
厚生労働省:『健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023』
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