この記事をお読みの皆様は、老後も正しく「ごみ捨て」ができる自信はありますか?
例えば、家族との死別を経験したとき。
病気や認知症をわずらったとき。
それでも体力や意欲を失わず、朝起きて規則正しくごみを出す。
片づけをこまめにして部屋が散らからないように気をつける。
そう思うと意外と難しく感じます。
- 複雑化するごみ捨てルール
- 弱っていく体力や筋力
- 失われていく生活への意欲
- それにも関わらず、なぜか増えていくモノへの固執(こだわり)
色々と考えていると、自分の家がごみで埋まっていく生活が想像できてしまいます。
しかも、人にはごみに見えるのですが、自分にとってはごみではない(と思い込んでいる)ので、他者による支援をこばんでいる姿もぼんやり浮かんでしまいます。
工藤哲さんの『母の家がごみ屋敷 高齢者セルフネグレクト問題』を読了しました。
リンク
本書は、ごみ屋敷問題を取り上げている書籍です。
ごみ屋敷に住む本人や関係者のインタビューを通じて、ごみ屋敷問題の背景にある「セルフネグレクト」について考察し、行政や医療による取り組みを紹介しています。
この本を手に取った理由
- 転倒予防には部屋の片づけが重要。
- 特に床の上にモノを置かないことが優先。
- モノであふれた家は、転ぶ危険が高まるだけでなく、不衛生になり健康的な生活から遠のいてしまう。
- 片づけをオススメしても拒否されるということを、私自身が多く経験している。
- 私はセルフネグレクトについては無知。
- 人に片づけをすすめるための「知識や選択肢を増やすことができるのでは」との期待から本書を手に取った。
本書の構成
- ごみ屋敷の実例
- ごみ屋敷に住む本人や家族、周囲の住民へのインタビュー
- 行政や医療による対策
- 専門家へのインタビュー
で構成されています。
セルフネグレクトとは?
「自分自身による世話の放棄・放任」
この状態が続けば、室内にごみやものがたまって不衛生になる。
それらに引火すれば火災などを引き起こす危険性もある。
さらに、本人の健康も悪化していく。
どうしてセルフネグレクトになったの?
本書では、配偶者や子どもなどの身近な人が亡くなったことによる強いショック、体力の衰えや認知症によってセルフネグレクトになってしまった方々が登場します。
日常生活への意欲を失うことに加え、人に迷惑をかけたくないとの思いから、外部の支援を拒否することで、セルフネグレクトに陥っていきます。
セルフネグレクトとごみ屋敷の関係
- 生活意欲が失われた状態が長く続く
- 定期的にごみが捨てられない
- 結果、ごみ屋敷になってしまう
本書からの学び
ごみ屋敷に住む本人や家族、周囲の住民へのインタビューが興味深い
どのようにして家にごみがたまっていったのかが垣間見えるインタビューです。
みな、好きでごみ屋敷にすんでいるわけではありません。
- 夫を亡くして生活の気力を失った。
- 子供が独立して1人になったとたん生活の気力を失った。
この方は、仕事をして犬を飼っていたにも関わらず、ごみ屋敷になってしまいました。 - 夫と子供を亡くしたショックで片づけのやる気がなくなった。
この方は、都内の高級住宅街に住んでいます。 - 元々モノをため込む性格で、年々こだわりが強くなり、妻と離婚。その後、モノが捨てられなくなってしまった。
この方は、元公務員です。 - 病気で動けない父親と、心の病で家事ができない母親と暮らす30代の女性。
父親が周囲の支援を拒み、ごみ屋敷で暮らすことになった。
支援をこばみ、周囲から孤立してしまっている方が多い印象です。
仕事をしていて、犬を飼っているにもかかわらず、セルフネグレクトになってしまうこともあるようです。
最後に紹介されている女性は、友達の家が片づいていて驚いたが、ごみで溢れる家が普通だと思って暮らしてきたと述べています。
お金や肩書があっても、仕事をしていても関係ない。
ごみ屋敷問題・セルフネグレクト問題は決して他人ごとではないと考えられます。
モノを買うときは捨てることも一緒に考えるという新たな視点が得られる
モノを簡単に買うことができるからこそ、買ったなら捨てることまで考えておかないと、モノがたまっていってしまいます。
モノがたまってきたら捨てるのではなく、買うと同時に捨てることまで考えるという視点です。
モノをため込まない生活は、安全で快適な生活につながります。
日ごろから片づけを心がけることが重要です。
▼参考記事
相談先や支援の具体例がわかる
- 地域包括支援センター
高齢者の総合相談窓口。
お住いの地区によって担当が決まっているので、今のうちから調べておきましょう。 - 自治体によるごみ捨て支援
ごみが捨てられない人に対するごみ捨て支援を取り入れる自治体が少しずつ増えている。市民の声によって支援を始めた自治体もある。
もし、現在お住いの地域でごみ捨て支援がなくても、要望を出すことでごみ捨て支援が始まるかもしれません。
本ブログのメインテーマである転倒予防との関連度
家にものがたまってしまうと、つまずいたりすべったりして転倒の危険性は高まります。
そのような点では、直接的な関係があります。
セルフネグレクトの状態では、片づけに加え、運動をして健康を維持しようという意欲も低下しています。
セルフネグレクトの予防方法に明確な根拠はありません。
そのため、セルフネグレクトを予防することで転倒が予防できるということは言えません。
その兆候に早めに気づいて、支援につなげていくことが重要と考えます。
それが、ひいてはその方の健康を守っていくことにつながるのではないでしょうか。
本書をお読みいただくと
- ごみ屋敷問題・セルフネグレクト問題は決して他人ごとではないことがわかる。
- ごみ屋敷問題は原因が複雑に絡み合っており、簡単に解決できるものではないことがわかる。
- 行政や医療関係者、専門家のインタビューを通して、試行錯誤しながらも対策に取り組んでいることがわかる。
- 自治体による違いがあるものの、ごみ捨て支援が始まっていることがわかる。
ご自身やご両親が住まわれている地域の
- 地域包括支援センターを今のうちから調べておくこと。
- ごみ捨て支援があるかどうか調べておくこと。
また、
- 体力や筋力が衰えないように、日ごろから運動をすること。
- 買い物をするときは、捨てることも一緒に考えること。
- 日ごろからこまめに片づけをおこない、ものを増やさない生活を心がけること。
をオススメいたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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