転倒予防と片づけには関連があるが、片づけを勧めても断られるので理論武装する話

2024/05/25

転倒予防 片づけ

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転倒予防と片づけには関連があるが、片づけを勧めても断られるので理論武装する話


今回の記事で伝えたいこと

・転倒予防と部屋の片づけは深い関連がある
・片づけを勧めてもだいたい断られる
・高齢者の転倒リスクを減らすために理論武装をする
・片づけた方が良いという漠然とした助言から一歩進んだ助言ができる
 
 
 こんにちは。
 理学療法士のわい爺です。
 私は2006年に理学療法士免許を取得しました。
 本記事をお読みの皆様に、私のこれまでの体験から得られた知見を共有いたします。

散らかった家をよく見ます

 私は理学療法士という職業柄、高齢者のお宅によく伺います。
 ゴミ屋敷とは言わないまでも、モノであふれている家は少なくありません。
 そういう時に直面する片づけ問題。

 つまずいて転ぶ危険があるので片づけた方が良いですよと、あの手この手で時間をかけて丁寧に説明します。
 その場に私以外の方がいれば、だいたい賛同してくれます。
 ですが、そのような漠然とした助言でうまくいったためしがありません。
 人によっては怒りだしてしまいます。



 私たちには散らかっているように見えています。

  • 手すりや歩行器などを使うスペースすらない
  • 人一人通るのがやっと
  • 床にはモノが散らばっている…

 ですが、そこにはご本人なりの理由が

 ご本人の尊厳を傷つけないように説得するには、こちらも理論武装する必要があります。
 漠然とした助言ではなく、心にスッと入ってくるようなピンポイントの助言ができれば…。私は片づけに関する知識が圧倒的に足りません。

 そこで、私が片づけについて学んだことを今回の記事にまとめました。
 出典も記載しています。
 高齢者世代の片づけに困っているすべての方に、今回の記事が参考になりましたら幸いです。

片づけをした方がよい根拠

65歳以上の人が転ぶ場所の約半数が自宅なのです


出典を参考に筆者が作成


 
 転倒といえば、外で起こるものと思いがち。
 実際、若い方は外で転ぶことが多いでしょう。
 ですが、年齢を重ねると、安心できるはずの住み慣れた自宅での転倒が増えていきます。
 もちろん、「自宅で過ごす時間が長くなるから」という理由もあります。

 転倒について説明したときに、「大丈夫。外に出ていないから。」という返事が返ってくることがあります。(私はけっこうな頻度で聞きます。皆さんはいかがですか?)
 もしそのようなお話を高齢者(患者・利用者だけでなく、ご両親やご友人、知人など)から言われた場合、自宅で転ぶことが多いことを念頭に、自宅内に転びそうな場所がないか、気をつける場所がないかを一緒に確認してあげてください。

 次は、転倒と片づけ習慣の関連について見ていきます。

家の中で転ぶ人は、床に物を置きがち


出典を参考に筆者が作成

出典:内山昌代,鈴木みずえ,金盛琢也:地域在住高齢者の転倒予防セルフケア行動の実態・因子構造・関連要因,日本転倒予防学会誌10,61-73,2023を参考に筆者が作成

 
 自宅で転んでいない人は、「部屋を片づけて床にモノを置かないようにしている」と答える割合が多いと報告されています。
 逆に、転んだことのある人は、部屋を片づけて床にモノを置かないようにしていない。

 転倒予防には「床に置いた(落ちている)モノ」がキーワードになりそうです。
 自宅の床にはモノを置かない。
 これが一つの解決策になります。

 まず着目すべきは「床」
 片づけのスタートは「床」から始めていきましょう。
 
 では、「どこの」床がオススメでしょうか?

ふだん通るところの「床」

 家の中で普段よく通るところの床には何も落ちていない状態にします。
  • ベッド ⇔ 居間
  • 居間 ⇔ キッチン、トイレ、お風呂、玄関、ベランダ
 
 などです。
 まずはよく通るところがどこなのかを把握します。
 よく通るところが把握できたら、優先的にその床を片づけます。

 具体的に言うと、
  • 電源コードがとおり道にこないように家電を置く。
  • カーペットの下はすべり止めをしく。めくれないように固定する。
  • 新聞や本など床にものを出しっぱなしにしない。
  • 出したら戻す場所を決める。





 よく通るところを片づけたら、次に片づける場所はどこをオススメしますか?

玄関や洗面所など狭いところの片づけは時間がかからず無理なくできる

 片づけを始めやすいのは狭いところ
 脱衣所や玄関などの小さい場所です。
 
 なんと、65歳以上の高齢者が転びやすい場所も、脱衣所や玄関などの狭いところが上位になっています。

 狭いところは片づけやすい場所であり、転びやすい場所でもある。この考え方はとても重要です。


出典を基に筆者が作成(単位は件)



片づけの取りかかりやすさ


転ぶ危険が少なくなる


脱衣所や玄関といった狭いところを片づける

 
 玄関の片づけに特化した記事も書いています。
 ぜひ参考になさってください。

 ▼参考記事

 「床」、「狭い場所」
 これで、片づける場所の助言ができるようになりました。
 ですが、モチベーションはどうでしょうか?片づけのやる気はありますか?

片づけは、いざとなると面倒でもったいないんだそうです

 65歳以上の高齢者にとって、片づけ(処分も含めて)ができない理由として、
  • いざとなると面倒
  • いざとなるともったいない
  • ものが多すぎて大変

 という回答が上位を占めています。


出典を基に筆者が作成

出典:中村久美:高齢期の生活財管理の実態と意識-人生100年時代における高齢期の住居管理に関する研究-,日本家政学会誌74 (1),27-37,2023を参考に筆者が作成

 
 身体が動くのに「面倒」と言われると困りますよね。
 
 ですが、年齢とともに身体が思うように動かなくなります。
 実際、高齢な人ほど片づけができない理由として、「身体的な負担が大きい」という理由が多くなります。
 
 例えば、つたい歩きをしている方が、荷物を運ぶのは大変。
 膝が痛くて曲がらない方が、正座をして荷物を片づけることはできません。
 高齢世代のみで片づけを始めるのは年々難しくなっていきます。

 そのため、お子さん世代の手助けが必要になってきます。
 お子さん世代の手助けについて書かれた書籍をレビューしています。
 日本初の片づけヘルパーさんの手記はたいへん興味深いです。
 
 ▼参考記事

 片付けが高齢世代のみでできないとなると、周囲の手助けが必要です。
 お子さん世代が手助けする。
 地域の方が手助けする。
 行政や業者に頼む。

 周囲の手助けが得られて、モノの処分を業者に頼むとしたらどこが良いのか悩んでしまいますね。

処分は買取サービスや地域のバザーが受け入れやすい

 65歳以上の高齢者が、処分のときに利用したいサービスについてのアンケート結果では、「利用したいもの無し」が第1位。


出典を基に筆者が作成



 その中でも心理的な抵抗感が少ないのは、民間の買取サービスや地域のバザーとのことでした。
 
 民間の片づけ・処分代行より、買取サービスの方が抵抗感が少ないようです。
 捨てるよりは売りたい。
 これは高齢世代だけでなく、若年世代にも共通する考えではないでしょうか。

 地域のバザーにしても、誰かがまた使ってくれたらうれしい。
 捨てられるよりは誰かの役に立ってほしい。
 そんな気持ちが感じられます。

 ただでさえ抵抗感のある片づけです。
 処分先としては買取やバザーを優先して提案するとよさそうですね。


実家にあるお子さん自身のモノを片づけよう

 お子さん世代の手助けが期待できる場合、まずは、実家においてあるお子さんご自身のものから片づけ始めましょう。

 ご自身の片づけから始めることで、ご両親の片づけたい気持ちに火をつけることが期待できます。


では、発信していきます

 理論武装も少しずつできてきましたので、Xで発信していきます。
 転倒予防の知識は誰しもが持っていてよいものです。
 インプレッションは多くはありませんが、「誰か一人にでも役立てばよい」との初心を忘れずに発信を続けていきます。

 「いいね」を下さる皆さま、ポストをご覧いただいた皆様、いつも本当にありがとうございます。






まとめ

  • 転倒予防と部屋の片づけは深い関連がある

  • 片づけを勧めてもだいたい断られるのは、心理的な抵抗感があるから

  • 高齢者の転倒リスクを減らすために理論武装をすることで一歩進んだ助言ができる


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 転倒予防には運動も大切です。
 ▼参考記事

 

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参考・引用

論文

内山昌代,鈴木みずえ,金盛琢也:地域在住高齢者の転倒予防セルフケア行動の実態・因子構造・関連要因,日本転倒予防学会誌10,61-73,2023

書籍

Emi:OURHOME 親に寄り添う、実家のちょうどいい片づけ,白夜書房 ,2019

阿部静子:だから、50歳から片づける,CCCメディアハウス,2022

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