【書評】『死ぬまで歩きたい!人生100年時代と足病医学』/久道勝也

2024/09/18

書評

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【書評】『死ぬまで歩きたい!人生100年時代と足病医学』/久道勝也



こんにちは。
理学療法士の「わい爺」と申します。 

すごいタイトルの本を見つけました。

『死ぬまで歩きたい!』




筆者は久道勝也先生。
東京都世田谷区にある下北沢病院の理事長です。

下北沢病院は、本書が発売した2019年3月現在、

アジアで唯一の足病総合病院である

本書より引用。

本書は、人生100年時代といわれる現代において、「歩くこと」「歩き続けること」がどういう意味を持っているのかを述べています。

結論を言うと、
point

本書はとてもおススメです。

ちょっと難しい言葉や専門的な言葉が書いてあったりしますが、繰り返し読みたくなります。そのほかの健康関連の本とは一線を画しています。

本書がわたしに響いた理由

タイトル

死ぬまで歩きたい!という願望をストレートに表現したタイトル。

ですが、現実は年齢とともにいつかは歩けなくなるかもしれない。
著者もそれを認めています。

  1. 歩行が困難になる
  2. 排泄が困難になる
  3. 食べられなくなる
  4. 死に向かう

1~4は人生の最後の下り階段
この下り階段を下りるスピードを少しでも遅くしましょうと提案しています。

そのためには最初の1段目である歩行に着目します。

「歩行」をキープすることは、人生を維持すること

本書より引用。

このように述べています。

本書には、歩けなくなるリスクを少しでも減らすためのヒントが書かれています。
特に足の異常に早く気づき、病院を受診することをオススメしています。
本書から一部抜粋すると

  • 痛み
  • かゆみ
  • むくみ
  • タコやウオノメ
  • 歩くスピード などなど

足の異常にいち早く対処することが、「歩行」を維持することにつながっていきます。

歩行を維持するための裏技的なものはありません。
足の以上に早く気づくこと。
そして、とにかく歩くことが大事。
シンプルですが間違いのない事実です。

一朝一夕で歩行を維持することはできません。
継続は力なり」です。
今後の人生を左右する歩行を維持するために、とにかく歩きましょう。

転倒予防について




出典を基に筆者が作成(四捨五入の関係で合計が100.1になっています)

出典:内閣府 令和4年版高齢社会白書


本書には平成29年のものが書かれていますが、令和4年に新たに発表になったのでこちらの表を使います。
転倒・骨折は要介護になる原因の第4位です。

  1. 転倒
  2. 動けない状態が長引く(入院、手術、安静)
  3. 歩行機能が衰える
  4. 要介護になる

このような流れで人は介護が必要な状態になってしまいます。

または、

  1. 転倒
  2. 転倒することが怖くなる
  3. 歩くことそのものを嫌がる
  4. 社会とのかかわりが大きく減少
  5. 社会の一員として生きているという自覚を失う
  6. 生きていく楽しみを見失う

転倒はこのような問題を引き起こしてしまいます。
転倒を予防することは、人生の質という問題に大きくかかわります。

このような議論になると、「歩けなくても社会とかかわっている人はたくさんいる」という反論が聞こえてきます。
もちろん、歩けなくても社会とかかわっている方がたくさんいることは確かです。

ですが、転倒への恐怖心をかかえながら、社会とかかわろうとする意欲を保つことが大変なのも確かです。

  • 転んで痛い思いをした
  • 転んでケガするかもしれない

そう思いながら外出に積極的になるのは難しいものです。

「歩行」をキープするために、転倒の予兆に早めに気づく。
「歩行」をキープするために、足の状態の変化に早めに気づく。

そのために必要なヒントを本書で学ぶことができます。

人生後半の生き方のヒント

表は筆者が作成

今の日本は超高齢社会です。
著者は人生100年時代の生き方(セカンドライフ)を提案しています。

仕事を続けるという選択

元気で歩行が維持できる間は、極力働き続けたほうが心身ともに錆びつかない生き方ができるのではないかと提案しています。

仕事は社会とのつながりを維持することにも役立ちます。
自分が社会の役に立っている感覚を得ることもできます。

近年問題となっているフレイルは社会とのかかわりが少なくなることがきっかけともいわれています。
これをフレイルドミノといい、

  1. 社会とのかかわりの減少
  2. 生活範囲がせまくなる
  3. 筋力が低下
  4. こころ
  5. 低栄養

と順々に影響を与えていきます。



限られた医療資源の使い方

分岐点(75歳)以下:病気になることそのものの予防に力を入れる。
分岐点(75歳)以上:すでに病気を抱えている人の介護予防にリソースを分配する。

著者は上記のような提案をしていますが、医療資源が限られている以上、このような議論は加速していくと思われます。

歩きの維持が健康の維持につながり、医療費を削減できる。
つまり健康は資産になるということです。

SNSでつながる

著者も社会とのつながりの重要性を強調しています。
人が弱ってきたときには、どうしてもまわりの人の支えが必要。

家族以外にどれだけの人とのつながりを持っているか。
SNSを通じて、対面以外の人間関係も生活の中で大きな要素を占めています。

著者のこの言葉を受けて、Xにてアンケートをとりました。
ご回答いただきありがとうございました。

結果はこちらから。



多くの方がSNSは社会とのつながりになるとお答えいただきました。

フレイル予防に新たな可能性が見えたかもしれません。
この分野の研究が進むことを願っています。

アンメット・メディカル・ニーズ

いまだ満たされていない医療ニーズのこと。

人生100年時代の現在、超高齢社会であることを前提に、認知症・孤独死・老々介護などの難問に対して、共通して解決すべき課題(アンメット・メディカル・ニーズ)は「歩行の維持」であると著者は述べています。

それが足病の専門病院を立ち上げた理由であるとのことです。

歩行の維持は超高齢社会に起こりうる問題を解決する1つの方法になり得ます。
何度もお伝えしますが、

  • 足の異常にいち早く気づくこと
  • 歩くこと

これらが社会課題の解決に役立つと言えるでしょう。

最後に

ここまで歩きを維持するためのヒントを述べてきました。
ですが、歩きを維持できなくなる瞬間はいつかは誰にでもやってきます。

  • 歩きを維持できなくなった、その後の人生はどのようなものか
  • どのような風景が見えるのか
  • その風景をどのようにとらえるのか
  • どのように備えるのか
  • どのように充実させて最期を迎えるのか

今のうちから考えてみてください。
正解はありません。
人生後半の物語をつくっていくのは自分自身です。

本書の最後では、著者は以下のようにまとめています。

人生の下り階段を自分の足と意思で降りてほしい。
ご自身の足と真剣に向き合ってほしい。

本書より引用


著者の願いを記して本記事を終わりたいと思います。

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