ブルブルって効くの?振動刺激と筋力トレーニングについて調べた話
こんにちは。
理学療法士の「わい爺」と申します。
最近、足をのせてブルブルするマシンが流行っていますね。
わたしも臨床で、ブルブルって効くの?と聞かれることが増えてきました。
結論からお伝えしますと
point
わたしは積極的におススメはしません。普通の筋力トレーニングで十分です。
今回の記事では、ブルブルマシン(振動刺激)と筋力トレーニングについて調べた結果をまとめました。
わたしの臨床での経験もあわせて書いていますので、参考になりましたら幸いです。
ブルブル(振動刺激)マシンとは
足をのせてブルブルふるえるマシンです。
座って足をのせたり、立って足をのせたりします。
振動刺激によって、足やふくらはぎを鍛えることができると宣伝されています。
ブルブル(振動刺激)マシンをあつかった論文ってあるの?
あります。
Google Scholarで「振動 筋力」で検索すると少ないながらも論文が見つかります。
例えば以下の通りです。
ブルブルマシン①全身をブルブルさせながら筋力トレーニングをするとどうなるのか
出典:相羽達弥・他:全身振動刺激を用いた運動プログラムが高齢者の身体機能および筋力に及ぼす効果,健康支援 19 (2) ,137-146,2017
対象
- 地域在住の65~79歳
人数
- 全身をブルブル(振動)させられながら筋力トレーニングをする人たち;18人
(具体的な写真を引用することはできませんので、本文をご覧ください) - ブルブルは使わず、1の人と同じ筋力トレーニングを行い、プラスでウォーキングをする人たち;16人
- 普段通りの生活をする人たち;16人
期間
- 8週間
方法
- の人たち:1回90分、週2回、計16回の運動教室を開催
- の人たち:1回90分、週1回、計8回の運動教室を開催
主運動の正味時間を同じにするため、1の人たちは週2回、2の人たちは週1回の実施頻度にしたと説明されています。
結果のまとめ
出典をもとに筆者が作成
考察
主運動の正味時間を同じにするということの意味が正直よくわかりません。
ブルブルの効果を調べたければ、ブルブル以外が同じになる集団を二つ作る必要があります。
この論文では、ブルブルを使わない人たちに余分にウォーキングをさせたり、運動の回数がそもそも違ったりしています。ブルブルを使う人たちの方が運動の回数が多く、あきらかに有利になっています。
これでは純粋にブルブルの効果をみることはできません。
では次に、結果のまとめをみてみましょう。
ブルブルを使おうが使うまいが、結果はほぼ同じです。
ブルブルを使った人たちの方が有利な条件だったにもかかわらず、ブルブルの機械を使わなくても筋力トレーニングの効果は認められています。
なんなら、普段通りの生活をしていた3の人たちも、歩く速度が上がっています。
これは測定の精度そのものに問題があるかもしれません。
測定をする際にブレがなく正確に測定できているかどうか、測定する人の正確さを調べることもできます。
この論文では測定の正確性についての話はなかったので、推測になりますが、測定する人の正確性にやや問題があったかもしれません。
この論文を読むとわかることは以下の通りです。
point
- ブルブルを使う人と使わない人で条件が違いすぎる。
- ブルブルを使わなくても、使った人と同じくらい運動能力が上がっている。
- ブルブルに特別な効果があるとはいえない。
ちなみに、論文で使用していたブルブルマシンは160万円で売っていました。
160万円払うことで、運動のモチベーションが上がる方もいらっしゃると思いますので、そういった方はぜひご検討を。
次に、イスに腰かけて足をのせるだけのブルブルの効果についてみていきましょう。
ブルブルマシン②イスに腰かけて、足をのせてブルブルさせるとどうなるのか
出典:峯松亮,羽崎完:高齢者に対する足底振動刺激がバランス機能に与える影響,理学療法学38 (2), 128〜129, 2011
対象
- デイサービスに通う人たち(平均年齢84.9歳)
人数
- イスに腰かけて足をのせてブルブルする;18人
期間
- 3カ月
方法
- 対象者全員が、イスに腰かけてブルブルマシンに足をのせます
- 1回15分
- 週2回
結果のまとめ
出典をもとに筆者が作成
考察
結果をみると、足をのせてブルブルするだけでこんなに効果があるのかとびっくりしてしまいますよね。
筋トレもウォーキングもしなくていいし、とても楽です。
ですが、この結果には落とし穴があります。
それは、対象者全員がブルブルを使っているということです。
本当にブルブルの効果を見たければ、ブルブル以外が同じになる集団を二つ作る必要があります。
今回の研究では対象者全員がブルブルを使っています。
これでは、ブルブルのおかげでよくなったのか、ブルブル以外でよくなったのかがわかりません。
なぜかというと、対象者がデイサービスに通っているからです。
論文では書かれていませんが、デイサービスでは通常、集団で体操をしたり、筋力を鍛えるような運動をしたりします。
また、食事が提供されていれば、栄養状態が良くなることもあり得ます。
入浴のサービスがあれば、身体が温まり動きやすくなるかもしれません。
朝早く起きて、生活のリズムが整えば、体調がよくなることもあるでしょう。
ブルブル以外にも身体が動かしやすくなる可能性がほかにもたくさんあるのです。
point
よって、この研究ではブルブルの効果は証明されていないので、ブルブルの効果を期待することはできません。
足をのせるだけで筋力が強くなるなら、臨床現場でもっと盛んに使われるはずです。
ですが、わたしは現場で見たことはありません。
論文の数もかなり少ないです。
それが何を意味しているのか。
値段に見合った効果がないということなのでしょう。
また、論文で紹介されていたマシンは生産終了していましたが、11,000円でした。
次に海外の論文を見てみようと思います。
ブルブルマシン③海外のブルブル(振動)マシンはどうなのか
出典:Ivan Bautmans et al: The feasibility of whole body vibration in institutionalised elderly persons and its influence on muscle performance, balance and mobility: a randomised controlled trial, BMC Geriatr. 2005; 5: 17.
対象
- 介護施設に入居している人たち(平均年齢77歳)
人数
- 全身をブルブル(振動)させながら筋力トレーニングをする;13人
- ブルブルマシンには乗るが、ブルブル(振動)させずに筋力トレーニングをする;11名
期間
- 6週間
方法
海外の論文ですが、ブルブルマシン①と同じ会社の全身ブルブルマシンを使っていました。
対象者は、全身をブルブルさせることができる大きめのマシンに乗り(画像はブルブルマシン①の項目をご覧ください)、筋力トレーニングを行います。
グループは2つ。
実際にブルブルさせられる人たちと、マシンに乗るだけでブルブルさせない人たち。
ブルブルさせない人たちの場合、振動音だけを流します。
振動音が聞こえるため、ブルブルしていなくても、ブルブルしているように感じるとのことです。
運動内容は、2グループとも同じで、スクワットや片足立ちなどを週3回行います。
結果のまとめ
考察
解釈の難しい結果になっています。
ブルブルなしグループは週3回、6週間も筋力トレーニングや片足立ちのトレーニングをしているのに、バランスの項目が低下しています。
開始時点で、年齢や体重、筋肉の量など、2つのグループで違いはありません。
ブルブルするグループだけ、終了時点での体重や筋肉量を測っていますが、ブルブルなしグループでは終了時点での測定は行われていません。
運動の効果が思ったほどに上がらないときは、ご飯を食べられているかどうか、体重が減っていないかどうかが気になります。
週3回の運動を6週間していても、あまりご飯が食べられなければ、運動の効果も少なくなってしまいます。
ブルブルなしグループだけ終了時点の測定が行われていないため、論文からはそのへんを読み取ることができません。
あくまで可能性の話です。
少なくとも2つのグループでは、ブルブル以外は同じ運動をしています。
違いはブルブル(振動)があるかないかだけ。
論文では、ブルブルを使ったほうが歩く速さが速くなり、バランスが維持できるとまとめられています。
この研究で使われているブルブルマシンは160万円でした。
もちろん、この研究を行うにあたり、ブルブルマシンの会社から援助を受けています。
この結果に160万円の価値があるかどうかは各個人の判断にはなると思います。
まとめ
point
- 全身ブルブルマシンは高い。
- ブルブルマシンに乗って全身をブルブル(振動)させながら運動をすると、ブルブルさせないときより効果が大きいかもしれない。
- 足をのせるだけのブルブルマシンは効果があるとはいえない。
- 値段に見合った効果があるなら、臨床現場で積極的にしようされているはずだが、わたしは見たことがない。
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