【転倒の原因】人が転んでしまう原因の解説まとめ

2024/10/20

原因 転倒

t f B! P L

【転倒の原因】人が転んでしまう原因の解説まとめ




こんにちは。
理学療法士の「わい爺」と申します。

この記事は、転倒の原因をまとめた記事です。
主に以下の論文を参考にしています。

この論文はガイドラインと言われています。

ガイドラインの定義は、
健康に関する重要な課題について,医療利用者と提供者の意思決定を支援するために ,システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し,益と害のバランスを勘案して最適と考えられる推奨を提示する文書。

Minds 診療ガイドライン作成マニュアル編集委員会.Minds 診療ガイドライン作成マニュアル 2020 ver. 3.0. 公益財団法人日本医療機能評価機構 EBM .医療情報部.2021 より引用。

ちょっと難しいので要約します。
専門家が集まり、とても質の良い論文をまとめます。
専門家が話し合い、治療法や検査法のオススメ度合いをまとめます。
このオススメ度合いをみて、患者さんと医療者は今後の方針を決めます。

ガイドラインは医療者だけでなく、一般の方が読んでもよいものです。

難しい言葉が並ぶので、読むのに一苦労します。
ですが、意思決定をする際に役立ちますので、一読することをオススメします。

推奨の強さと根拠の質

ガイドラインを読むとき、推奨の強さと根拠の質という言葉が出てきます。

今回読んでいく出典では、下のようなランク付けをしています。

推奨の強さ

1=強力
「メリットが明らかにデメリットを上回る」

2=弱い、または条件付き
「根拠の質が低いか、メリットとデメリットのバランスが拮抗している」

根拠の質

A=高
「新たな研究によって、結果が変わる可能性は低い」

B=中程度
「結果を支持する研究があるが十分ではないため、新たな研究によって、結果が変わる可能性がある」

C=低
「結果を支持する質の高い研究がないため、新たな研究によって、結果が変わる可能性が高い」

根拠なし

E=専門家による推奨
「基準を満たす質の高い研究がないため、専門家の合意に基づいて推奨が決定された」

これらを組み合わせて、1Aや1B、2Cなどの使い方がされます。
組み合わせの意味が分からなくなったら、推奨の強さと根拠の質を確認しながら読んでいくと理解がしやすくなります。

では、これからこの世界的に活用できるガイドラインを読んでいきましょう。
どうして人は転んでしまうのか。
その原因を解き明かし、転倒予防にお役立ていただけましたら幸いです。

人が転んでしまう原因は、個人の問題(内的要因)と環境の問題(外的要因)の2つに分けられます。

個人の問題

個人の問題は内的要因ともいわれます。

これから先に個人の問題について書いていきます。

バランス(平衡覚)の低下

転倒のリスクを判断するために、歩行とバランスを測定することがオススメされています=1B
歩行とバランスを測定することはメリットがデメリットを上回るが、新たな研究によって結果が変わる可能性がある点には注意が必要です。

生活場面で使いやすいのは、SPPB(Short Physical Performance Battery;ショートフィジカルパフォーマンスバッテリー)という検査です。
SPPBは、座る ⇔ 立つを繰り返したり、時間制限ありのバランスの検査が含まれており、比較的行いやすい運動能力検査です。

▼動画での解説はこちら
こちらの記事の下の方にバランスの検査や立ち上がり検査について動画で解説しています。
動画を見ながらご自身の能力を把握することもできますので、ぜひご覧ください。

▼そのほかの参考記事
転ばないためにできる運動を解説します
片足立ち運動の方法を解説します

姿勢が悪くなった

▼参考記事
足首が硬いと転ぶかもしれないので、足首を柔らかくしましょう
すり足だと転ぶかもしれません

歩きがゆっくりになった(歩行速度の低下)

転倒のリスクを把握するために歩くスピードを測定することが強くオススメされています=1A

本出典は国際的なガイドラインのため、「0.8m/s 未満」を転倒リスクありと判定しています。
日本を含むアジア圏では、「1.0m/s 未満」が採用されることが多いです。

この「1.0m/s 未満」を日常生活で判定するには、「青信号の間に横断歩道を渡り切れるかどうか」です。

警視庁によると、
一般的には歩行速度を秒速1メートルとして道路を渡りきれるよう調整しています。
警視庁ホームページより引用

全部が全部ではありませんが、おおむね青信号の間に渡り切れるかどうかで、歩くスピードが遅くなっていないかどうか判定するとよいでしょう。

また、歩くスピードの測定では、Timed Up and Go テストという方法がありますが、これは「1B」となっています。結果の解釈がまちまちで、統一された見解がないとのことです。


▼参考記事
歩きが遅くなったら転ぶかもしれません

筋力が衰えた(筋力の低下)

▼参考記事
スクワットが難しいときは立ち上がり運動をオススメします

杖、シルバーカー、歩行器などの補助具に問題がある

▼参考記事
転ばぬ先の杖とは
杖先ゴムを交換するときに知っておきたいこと
おしゃれな杖をお探しの方はこちらの記事をごらんください
シルバーカーのメリットとデメリット

転ぶことへの恐怖心がある


感覚の低下

めまいの症状について定期的に質問する。必要に応じてフォローアップをし、原因を特定すること:E

めまいは転んでしまった65+世代によく見られる症状ですが、個人によって症状の意味が違い、多くの場合、原因は1つではありません。

目が見えにくくなった(視覚の低下)。
耳が聞こえにくくなった(聴覚の低下)。

認知症または軽度認知機能障害がある

認知機能の測定は「1B」です。

1Bということで、認知機能の測定は強くオススメされていますが、もしかしたら新たな研究で結果が変わる可能性がある点に注意が必要です。

認知症や軽度認知障害は、転倒や股関節骨折、腕の骨折、頭部外傷などの転倒関連傷害のリスクを2倍にします。

なぜかというと、注意力・認知力・判断力が低下するためと言われているからです。

また、レビー小体型認知症は、パーキンソン病と同様の動作困難が生じたりします。

自律神経の問題がある

起立性低血圧のため、起きたり立ち上がったりしたときに立ちくらみがある。

対策として、
  • ゆっくり起き上がるようにする。
  • ゆっくり立ち上がるようにする。
  • 病院で相談する。
 
尿もれがある。

対策として、
  • 病院で相談する。

転びやすい病気にかかっている

パーキンソン病や、パーキンソン症状が現れるレビー小体型認知症、脳卒中など。
病気の治療は医師の指示に従います。

受診時に運動をした方が良いか、するとしたらどのような運動が良いか確認してください。
もし、いつも行っている運動があるなら継続してよいかどうかも確認をお願いします。

飲んでいる薬の影響がある

お薬については、服用を止めたり量を減らせば、比較的短期間で、転びやすい状態ではなくなる場合もありますので、かかりつけ医に相談するとよいと思います。特にお薬を一日に6剤以上飲んでいる方はポリファーマシーという状態で、有害な出来事が起きやすく、転倒の発生率が高いことも報告されています。
 
薬は自己判断で中止せずに、必ず医師・薬剤師に相談する。

高齢者に副作用が増える理由は
  • 服用する薬の数が多いこと
    肝臓や腎臓の働きが低下するため
     薬の代謝分解が遅れて効き目が必要以上に長引く
     薬の排泄が遅れて薬が体内に長く残り、薬が効き過ぎてしまう

栄養不足


ビタミンDが不足している

▼参考記事
ビタミンDと転倒予防の関係について調べたことまとめ

痛みがある

▼参考記事
膝の痛みがあると転ぶかもしれないので、オススメの運動を紹介します

環境の問題

環境の問題は外的要因ともいわれます。

ここから先は環境の問題について書いていきます。

段差や障害物がある

段差は段差解消材の導入を検討する。
1~2cmの低い段差でもつまずいてしまう。
 
足を上げた方が筋肉が鍛えられるから段差はそのままの方が良いという人もある。
自宅はくつろいで安心できる場所なので、この説は賛否両論。
自分の立場を決めておいた方が良い。

障害物は
  • そこにすでにあるもの
  • まわりから崩れ落ちてくるもの

の2つが考えられる。
すでにある障害物(電気コードなど)は片づける。
めくれやすいカーペットはすべり止めをしく。
玄関マットはその必要性を検討する。必要なければない方が良い。

廊下や部屋のわきに積んであって、今後崩れ落ちる危険性があるものも撤去がオススメされる。ただし、立ち上がったり歩いたりするときにそこにつかまって転倒予防になっている可能性もあるので、撤去と同時に同じ場所に安全につかまれる物を用意する。

片づけの問題

床にモノが落ちていると、それにつまずいたり滑ったりする危険がある。
よく通る床には何も落ちていないように片づけをオススメする。

▼参考記事
転倒予防と片づけには関連があるが、片づけを勧めても断られるので理論武装する話
【玄関の片づけ】安全・快適なくらしへの第1歩です。

履き物の選び方が間違っている

スリッパやサンダルは転びやすい履き物なので避ける。
基本的にはかかとが固定でき、履きやすいタイプの靴をオススメする。
かかとのカーブが合っている。
土踏まずが靴のアーチラインに合っている。
つま先が上がっており、柔らかくよく曲がる。
靴ひもよりは、マジックテープ。
軽く、クッションが効いているとなお良い。
サイズは足の大きさ+1cm。
靴の裏がすり減っていないかを確認する。
すり減っているようなら買い替えを検討する。

▼参考記事
はき物を選ぶときに気をつけたいこと

滑りやすい場所がある

水濡れしている場所は滑りやすい。
自宅:キッチン、洗面所、お風呂、トイレなど水を使う周囲。
屋外:雨の日のタイルや歩道の白線、マンホールのふた。
店舗:野菜くずが落ちていたり、魚売り場、トイレ、製氷機、花売り場の周りが水濡れしている可能性がある。
 
▼参考記事
雨の日に転ばないためのポイント
買い物中も転ばないために気をつけたいポイント
  
入浴で気をつけたい点は
  • シャワーチェアや滑り止めマットを使用
  • 入り口の段差が高ければ、中に「すのこ」を設置
  • 浴槽が高ければ手すりの設置や浴槽内イスの設置
  • 浴槽のふちに腰かけられるようボードを設置
  • せっけんの泡はよく洗い流す
  • 脱衣所の床が濡れていないか確認

家の中が暗い

自動で点灯する照明(フットライト)を設置することを検討。

特に夜のトイレは危ない。
  • 寝起きで身体が思うように動かない。
  • 部屋が暗い。明かりをつけてもすぐに順応できない。
  • トイレに行きたくて焦っている。
 

階段がある


手すりがない


坂がある


まわりの人の影響

▼参考記事
盲導犬ユーザーが安心して歩くために、あなたができることと、しない方が良いこと

▼参考になりましたらクリックお願いいたします

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキング


QooQ