【書評】『親の健康を守る実家の片づけ方』/永井美穂【実家の片づけと転倒予防】

2024/08/18

読書感想文 片づけ

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【書評】『親の健康を守る実家の片づけ方』/永井美穂



 こんにちは。
 理学療法士のわい爺です。
 私は2006年に理学療法士免許を取得しました。
 本記事をお読みの皆様に、私のこれまでの体験から得られた知見を共有いたします。
 
 転倒予防のために、部屋を片づけることはとても大切です。
 
 ですが、片づけへの意欲は年々失われ、片づける体力も減っていきます。
 私は、ゴミ屋敷とは言わないまでも、散らかった家を多く目にしてきました。
  • 靴が散らばっている玄関
  • 入れないお風呂
  • 歩行器が通れないほどに物が置かれた廊下

 転んでしまわないかといつもヒヤヒヤします。
 片づけるようアドバイスするものの、ご本人たちで行動に移すことはとても難しいです。
 
 皆様のご両親の家は、安全に暮らせるくらい片づいていますか?
 
 高齢になると、思うように体が動かなくなります。
 場合によっては生活に介護が必要になります。

 高齢者の片づけの目的は、転倒せず安全に生活できること。
 そのため、片づけのアドバイスをするにも、高齢者の身体の特性や、若い時との違いや変化を理解する必要があります。
 つまり身体の状態に合わせて、片づけの助言を工夫する必要があります。

 永井美穂さんの『親の健康を守る実家の片づけ方』を読了しました。


 本書の著者である永井美穂さんは、まさにその2つのスキルを持ち合わせています。
 永井さんの提唱している「片づけヘルパー」とは、高齢者を介護するスキルと、整理収納のスキルを掛け合わせたヘルパーさんのことです。
 永井さんは「片づけヘルパー」として、高齢者の身体の特性を理解しながら、片づけや整理収納の助言・手助けを行っています。

 本書は、日本初の片づけヘルパーである永井美穂さんによる、実家の片づけに関するノウハウがぎっしりつまった本です。
 永井さんの豊富な体験をもとに、片づけのノウハウを解説してくれています。
 1つのセンテンスに3つのキーワード。
 わかりやすい文章で書かれており、とても読みやすい本です。

この本を手に取った理由

  1. 片づけヘルパーという肩書きが気になった。
  2. 親の健康を守るという考え方が、まさに私のテーマと合っていた。
  3. キレイさっぱり片づけるのは私自身の経験としても難しいと感じている。
  4. 高齢者の身体の特性を理解したうえで、片づけのポイントを押さえることはできないか。
  5. そういった知識は日々の臨床でも使えそうであると期待した。

本書の構成

  1. 親と喧嘩しないための片づけのコツ
  2. 親のための片づけのコツ
  3. 介護が必要になったときの片づけのコツ
  4. 最期を迎えるための片づけのコツ
で構成されています。

実家の片づけの目標は安全第一

ケガや転倒を防ぐ片づけを目指す

 一見、不要に見えるイスや台が「安全」をになっていることもあります。

 年齢とともに立ち上がることがおっくうになってきます。
 立ち上がってすぐに歩き出すとふらつきます。

 そのため、あちこちにつかまって歩く方がいるのですが、元気な方にはそれが分かりにくいです。
 つまり、こちら側が不要に見えても、実はふらつきやすいところで、つかまるのに便利なものというものがありえます。

 それを無くしてしまうと、転ぶ危険が増えてしまいます。
 実は転倒を防いで「安全」を担っているものかもしれないというのは、片付けを進める上で、重要な視点です。

床にはものを置かない

 床にものを置きがちだと転ぶ危険が増えます。
 床に置いてあるものにつまずくためです。

 ▼参考記事
 
 もう1つ重要な視点があります。
 床に積んである荷物が崩れて、それにつまずくということです。
 崩れると通り道を塞いでしまいそうな床に積まれた荷物は早々に片付けてください。

 先程の段落で述べた、「安全」を担っているのうちには入りません。
 手をついたら崩れてしまいそうに積まれた荷物は、片付けの対象です。
 もしそこに手をつきたい場合は、イスなどの安定したものを置いてください。

段差は解消する

 これは、自宅内に段差があった方がそれを乗り越えようとするため、いい訓練になって筋力が維持できるという説とぶつかることが多いです。
 私は、くつろいでいる自宅では、安全を優先してほしいという立場をとっています。

  • 部屋と部屋の段差にはホームセンターで買えるような段差解消材をつける。
  • お風呂はすのこをしく。滑り止めをしく。
  • 便座が低ければ、高くする。
  • 玄関は台を置く。

 少しでもつまずく危険を減らして欲しいと思っています。


 バリアフリーは段差を解消することだけではなく、部屋が片付いていることもバリアフリーといえます。
 片づけは、かかるお金も少なく、簡単にできるバリアフリーです。

しゃがまないと取れない場所への収納はやめる。

 人には収納しやすい高さがあります。
 それは、目の高さから腰の高さまで。



 ▼参考記事

 椅子や脚立に乗らなければ取れないような天袋や、棚の高い場所に収納しているものは下ろした方が良いです。

 しゃがみ動作は年々苦手になります。
 若くてもかかとを付けたまましゃがめない方がいます。
 人工股関節のような脱臼リスクのある手術を受けた方はしゃがむことが、本当に難しくなってしまいます。

 しゃがむだけでも大変なのに、そこから荷物を持って立ち上がるのは本当に大変です。

 低い場所に収納しているもの、床下に収納したものは、取り出しやすい位置に移動しましょう。
 本来の置く場所に置けず、たまたま空いていた場所にとりあえず置いてしまうと、次使いたい時に「あれどこいった?」となってしまいます。
 使いやすい収納を目指していきましょう。

トイレに近い部屋を用意する

 高齢者のトイレ問題は深刻です。
 トイレに行くのが大変だから、水分を控えようとする方がいます。

 夜寝てからトイレに行きたくなる方もいらっしゃいます。
 夜のトイレは転倒のリスクが高いです。
  • 寝起きで身体が動かしにくい
  • 暗い
  • トイレに行きたいので焦っている

その時その時で必要な知識が載っている

 今回は転倒予防にフォーカスして記事を書きましたが、介護が必要になった時の片付けや、最期を迎えるための片付けなど、その時そのときで必要になりそうな情報がこの1冊に詰まっています。

 片付けの本を沢山読んできましたが、実家を出ている場合は、実家にある自分のものをまず片付けること。
 実家に自分の荷物を送らないというのは共通の考え方のようです。

 実家にある自分のものを片付けることが実家の片づけを始めるきっかけにななり得ます。
 実家の片付けに悩んだ際は、まず自分のモノから始めていきましょう。

本書をお読みいただくと

  • 実家の片付けの目的は安全第一であると理解できる。
  • その時その時で必要な知識を得ることができる。
  • 高齢者の身体の変化や特性を理解した上で、片付けをめぐって親と喧嘩しないためのヒントが得られる。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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