SPPBスコアごとのフィードバック(点数別の患者さんへの伝え方)
SPPBの測定方法や評価項目については多くのサイトで解説されていますが、測定後にそのスコア(点数)を患者さんにどのように説明・フィードバックするかで悩んでいませんか。
例えば、SPPBが10点だった場合にどのように伝えるべきか、8点だった場合にはどんな言葉で説明すると納得してもらいやすいのか。こうしたスコアごとの具体的なフィードバック例は、インターネット上でもほとんど見つかりません。
本記事では、理学療法士として実際の臨床でSPPBを用い、患者さんにフィードバックしてきた具体的な伝え方を、スコア帯ごとに紹介します。
SPPBの点数説明や患者さんへの伝え方で困っている方の、一助となれば幸いです。
※個人情報保護の観点から、病名や個人が特定できそうな情報は除外します。
SPPB 0〜3点のフィードバック例(転倒・自立に強い注意が必要なレベル)
0点
ご本人向け
測定お疲れさまでした。今回の測定はなかなか難しい測定でした。握力は10kgでした。男性の目標値が28kgなので、グーパーの運動がオススメです。何も持たなくても軽く動かすだけでも握力はついてきますので、ぜひ続けてください。
足腰の運動も寝てできるものをご紹介いたしますので、自宅でも取り組んでいただけたらと思います。
転倒の危険性がありますので、移動はしばらく車いすにしていただいて、運動を続けていく中で少しずつ動けるようになってきたら、歩行器なども考えていきましょう。
自宅での移動で困っていませんか?
スタッフ向け
バランス保持困難、歩行困難、立ち上がり困難で結果は0点となりました。握力は10kg弱と目標(28kg)を下回りました。転倒リスクの観点から、移動は車いすが妥当であると思います。自宅でもトイレ以外ほとんど移動されず、その時も伝い歩きではなく、座ったまま移動されます。
1点
ご本人向け
大変な測定をお願いしてしまい、お疲れさまでした。
歩くのが難しそうでしたので、引き続き車いすを使用していただいて、筋力がついてきたら歩行器なども考えていきましょうね。
運動は寝ながらできるものがオススメですが、いかがでしょうか?
無理なくできるものを一緒に探していきましょうね。
スタッフ向け
前回は0点、今回は1点でした。
身体機能は著明に低下しており車いす使用が妥当です。
運動する意欲も無いようで、筋力が無いから運動できないと言っていました。
本来は逆で、運動しないと筋力がつかないと説明しましたが、あまりわかってもらえてない印象でした。
2点
ご本人向け
バスステップの上り下りは少し危ない場面がありましたね。
引き続き手すりを使って安全にお気を付けくださいね。
シルバーカーですが、膝が少し不安定な様子でした。歩行器の方が安定感が増しますので、そちらの使用も考えていきましょう。
運動は、〇〇がオススメです。運動は続けることに意義がありますので、続ける中で少しずつ膝も安定してくると思います。
これからも転ばないように十分お気を付けください。
スタッフ向け
転倒の危険は高いという判定でした。(12点満点中2点)
バスの昇降ですが、右足の大きな膝崩れを生じてしまい身体を支えました。
介助者と共倒れの危険も考えられます。
シルバーカー歩行ですが、やはり右足の膝崩れを起こす危険のある歩き方でした。
運動の機会をさらに増やせるようにするともう少し改善してくるのではないかと思います。
立ち上がりも難しかったので、移乗時も引き続き転倒には十分気をつけてください。
3点
ご本人向け
前より少しずつ動くのが大変になっているような結果でした。最近の動きはいかがですか?
バスに乗るときは車いすのままが良いかと思いますが、院内は歩行器を使って歩いてみてもよいかもしれません。
スタッフ向け
以前の歩けていた頃と比べてもバランス、歩行速度ともに低下しています。
少しずつ状態は回復してきているようですので、歩行器歩行はいかがでしょうか?バスに乗るときは、今のまま車いすが妥当かと思います。
歩くときはどなたかが見守ってくださると安心です。
SPPB 4〜6点のフィードバック例(支援や環境調整で改善が期待できるレベル)
4点
ご本人向け
少し体重が減っているようですが、食欲はいかがですか?筋肉をつけるには、お食事がとっても大切です。
運動としては座ってできるラジオ体操をぜひ続けていただけたらと思います。
スタッフ向け
半年前と比べて歩行や立ち上がりがゆっくりになっています。体重も2kg以上低下しており、サルコペニア、フレイルの疑いありと判定されました。ここ2週間ほどが特に体調が悪いようですが、自宅の階段昇降が難しくなってしまうリスクがあります。座って安全にできるラジオ体操がオススメです。
5点
ご本人向け
以前より動くのが大変になってきていると思われる結果でしたが、最近転んだりされていませんか?
杖を使うようになったとのことですが、杖先ゴムがすり減っています。すり減ったままだと滑って転んでしまうかもしれませんので、交換をオススメいたします。
スタッフ向け
SPPBは5点と3年前と比べてマイナス4点となっています。立ち上がりや歩行に時間がかかるようになってしまいました。プレフレイル・サルコペニアの疑いありと判定されました。運動は犬の散歩で1日4回ほど外に出て10~40分位歩くそうです。杖が新しくなりましたが、杖先ゴムがすり減っており、交換をお願いします
6点
ご本人向け
今回の測定結果はちょうど中間くらいの点数でした。右ひざの痛みが点数を下げていると思いますので、杖をついて膝を守ってあげると良いのではないかと思います。
膝が痛い方は運動の適応になりますが、次の受診で整形外科の先生に運動してよいかどうか、するとしたらどんな運動がよいか聞いてみてください。
先生から教えてもらった運動の細かいやり方などは、こちらでもお伝えすることは可能ですので、わかったらこちらにも教えてください。
スタッフ向け
SPPBは6点と低値で、転倒の危険性は高いと判定されました。
右膝の痛みがあり、杖の適応です。
運動習慣はあまりないとのことですので、無理なくできる運動をオススメします。
SPPB 7〜9点のフィードバック例(体力低下のサインが見え始めるレベル)
7点
ご本人向け
杖を使っていますが、今回の結果では転ぶ危険があると判定されましたので、引き続き慎重に歩いて転ばないようにお気を付けください。
足踏みの運動はぜひ続けていただいて、プラスでウォーキングをすると更に効果がありますのでオススメです。
また、手の力が入りにくい様子ですので、グーパーの運動もオススメです。
スタッフ向け
評価の結果、身体機能は中の下といったところでした。
転倒の危険性は高いと判定されています。
杖を使っていますので、今はこれで様子を見てもいいと思いますが、方向転換は慎重に行っていただけたらと思います。
杖でもふらつくようになってきたら歩行器が妥当かと思います。
毎日、足踏みの運動をしているようです。
それに加えて、ウォーキングなどの有酸素運動も始められると尚良いかと思います。
また、握力が低いので、手すりを握ってても体重を支えきれないといった
危ない場面もあるかもしれません。
グリップ運動が禁忌でなければ、そちらもやっていただけたらと思います。
7点
ご本人向け
今回の結果は7点でした。引き続き慎重に歩いていただいて、転ばないようにお気を付けください。デイサービスに通っておられるとのことですので、ぜひ楽しく通って、できれば長く続けてください。運動は続けることに意義がありますので、続けることで効果が見えてきます。
1回転んでしまったそうですので、歩行器を使うことも視野に入れていきましょうね。
スタッフ向け
SPPBの結果は7点と転倒の危険性があると判定されました。
また、握力と足の細さからプレフレイル、サルコペニアの疑いありと判定されました。
つかまらずに立ち上がることが困難で筋力トレーニングの適応となりますが、デイサービスで週2回運動をしているとのことです。
一度転倒してしまったので、歩行器の使用を検討する時期ではないかと思います。
7点
ご本人向け
1年半前と比べると点数は同じなのですが、歩くのと立ち上がるのが少しゆっくりになっている様子ですが、最近困っていることはありませんか?
最近スリッパを履かれているようですが、スリッパやサンダルは転ぶ危険性がありますので、踵をしっかりと覆える靴がオススメです。
スタッフ向け
1年半前と比べるとSPPBの点数自体は変わっていませんが、歩行と立ち上がりがゆっくりになっています。
握力は変化ありません。
杖を使うことと、室内履きはスリッパではなく、踵を固定できる靴(スニーカー)に変更することをお願いしました。
日常生活の大変さから、初めてサルコペニアの疑いありと判定されました。
8点
ご本人向け
去年と比べると動くのが少し大変になってしまった様子ですが、最近いかがですか?
運動はあまりされていないようですが、これからのことを考えると運動がオススメですので、周りの方へ相談して、どこか運動できる施設に通われると良いのではないかと思います。
スタッフ向け
昨年と比べてSPPBは1点低下しています。運動習慣はなく、買い物でスーパーまで片道5分の歩行を運動の代わりとしています。来週の金曜日に介護保険のサービス担当者会議があるとのことです。デイサービス等の運動できる所へ通うことも検討してはいかがかとお伝えしました。
8点
ご本人向け
去年より良くなっていました。だいぶ頑張っておられる様子ですね。
この調子なら四点杖を使えばお1人で歩いてもよさそうです。ただし、まだまだ油断できる数値ではありませんので、起きたり立ったりの動作はゆっくりと行ってください。歩くときも慎重に歩いて、転ばないようにお気を付けください。
スタッフ向け
前回が7点、今回が8点と改善が見られました。
歩行が速くなり、立ち上がりができるようになっていました。
四点杖フリーにしたいと思います。
急に起き上がったり、急に立ち上がったりしないこと、ゆっくり慎重に歩くこと、具合が悪かったら我慢せず申告することをお願いします。
8点
ご本人向け
今回の結果は、杖を使った方がいいと思うような結果でした。まだまだ油断できません。
運動に一生懸命励まれていますので、ぜひ続けてください。
スタッフ向け
足が細く、立ち上がりに時間がかかり、サルコペニアの疑いありと判定されています。
転倒予防のために移動時は杖の適応です。
歩数を定期的に記録したりと運動の意欲はありますので、継続していただけたらと思います。
9点
ご本人向け
バランスがとってもよかったです。満点でした。立ち上がりで点数を下げてしまいましたが、筋力が少し弱くなっているかもしれません。
足にしっかり体重をかける運動がオススメです。
もし今後ふらつきが強くなってきたら杖などを使うことも検討していきましょう。
スタッフ向け
プレフレイルの状態ではありますが、デイサービスにも通っておられるとのことですので、そちらで運動したり他の人とお話ししたりして刺激があるのでとても良いと思います。
バランスの数値が満点でした。
立ち上がりと握力を見るに筋力はやや低下していると思います。
必ずしも補助具を勧めるとまではいきませんが、今後ふらつきなどが強くなってきたらケアマネさんを通して福祉用具を導入したりしていただけたらと思います。
SPPB 10〜12点のフィードバック例(自立度は高いが維持が重要なレベル)
10点
ご本人向け
今回の結果は12点満点中10点でした。バランスと立ち上がりで少し点数を下げました。目指せ満点ですので、ぜひ運動を続けられてください。
まだまだ油断できませんので、慎重に歩いて転ばないようにお気を付けください。
スタッフ向け
今回は12点満点中10点でした。
バランスと立ち上がり筋力の項目で点数を下げてしまいました。
満点で初めて「移動能力の低下なし」と判定されますので、運動を続けて筋力や体力を向上させていきましょうと伝えました。
11点
ご本人向け
結果は12点満点中11点でした。握力も良好でした。今も元気に外出されていますので、ぜひ続けてください。
運動としては、足にしっかり体重がかかり、今より少し強い負荷での運動がオススメです。
スタッフ向け
合計点が11点で移動能力はやや低下しているものの、転倒の危険性が高いわけではありません。
握力は女性の目標値を上回り、足もまだ細くなってはいません。
電車やバスに乗って出かけたり、家事でこまめに動いたりしています。
今より負荷の強い運動をオススメします。
12点
ご本人向け
今回の結果は満点でした。前回より良くなりました。
散歩を始められたことがプラスになりました。
この点数の方は、足にしっかりと体重をかける運動がオススメですので、散歩とスクワットをぜひ続けてください。
スタッフ向け
SPPBは去年は11点、今年は12点で満点を取ることができました。
ロコトレの資料をお渡ししました。
散歩も始められたとのことです。
SPPB満点の方は寝て行う運動より、立って足にしっかり体重をかけた方が効果的であることを説明し、散歩とロコトレを継続するようお願いしました。
SPPBのスコア別フィードバックを行うときの注意点(理学療法士向け)
SPPBの評価結果を患者さんに説明・フィードバックする際は、単に合計スコア(点数)だけを見るのではなく、どの評価項目で点数を下げているのかを解釈することが重要です。例えば、同じ10点であっても、バランス、歩行速度、立ち上がり動作のどこに課題があるかによって、必要な支援や介入の方向性は大きく異なります。
バランス項目で点数を落としている場合には「バランスがとりにくくなっているため、転倒予防を意識した練習が必要である」と説明できますし、立ち上がり動作で点数が低い場合には「下肢筋力の低下が影響している可能性があり、筋力トレーニングが有効である」といった患者さんにとっての「なぜ?」が分かる説明がしやすくなります。
また、SPPBの測定中には、点数には直接反映されないものの、評価結果の解釈に重要な情報が得られることも少なくありません。例えば、検査中の指示理解が不十分であった、立ちくらみを訴えた、動作中に膝崩れが見られたなどの所見です。こうした点数に現れない挙動や反応も含めて総合的に評価結果を説明・フィードバックすることで、患者さんの理解が深まり、より納得感のある説明につながります。
まとめ|SPPBは「点数」より「伝え方」で価値が決まる
SPPBは、身体機能を客観的に評価できる有用な指標ですが、点数(スコア)を伝えるだけでは、その本来の価値を十分に活かすことはできません。評価結果をどのように解釈し、患者さんにどのような言葉で説明・フィードバックするかによって、SPPBは「ただの評価」から「行動につながる評価」へと変わります。
同じスコアであっても、どの評価項目に課題があるのか、測定中にどのような反応や挙動が見られたのか、過去と比べてどのような変化をしているのかを踏まえて説明することで、患者さん自身が「なぜ今の状態なのか」「何に取り組めばよいのか」を理解しやすくなります。これは、リハビリテーションへの納得感や継続意欲を高めるうえで重要な視点です。
SPPBの点数に一喜一憂するのではなく、評価結果を患者さんの生活や行動につなげるためのツールとして活用することが、理学療法士に求められる役割といえるでしょう。本記事が、SPPBの結果説明やフィードバックに悩む方の参考となり、日々の臨床での実践に役立てば幸いです。
SPPBをより深く理解するための関連記事
SPPBの結果をより深く理解するためには、フレイルやサルコペニアとの関係を併せて知っておくことも重要です。
フレイル・サルコペニアとSPPBの位置づけについては、👇の記事で詳しく解説しています。
🔗 【無料配布】SPPB・フレイル・サルコペニアを一括評価|理学療法士が作った自動集計ツール
SPPBを用いた評価の中で「もう少し細かく身体機能を評価したい」と感じた場合には、SPPBを基に作成されたBASE(身体機能評価法)という選択肢もあります。
BASEの評価項目やSPPBとの違いについては、👇の記事で解説しています。
🔗 【BASEとは?】SPPBを改変した身体機能評価法を理学療法士が解説
SPPBは臨床評価だけでなく、研究や学会発表、論文作成にも広く用いられています。
SPPBのデータ解析に無料で使用できる統計解析ソフトEZRについては、👇の記事で詳しく紹介しています。
🔗 【EZRとは?】無料で安心!統計初心者でも大丈夫!おすすめ統計ソフト「EZR」について解説します
※この記事は、臨床・研究で評価指標に悩む医療職向けに書いています。
今後も評価・統計の記事を更新します。
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