BASEは順天堂大学オリジナルの身体機能の評価法
BASE(Balance, Ambulation, Sit up, Endurance)は、順天堂大学が開発したSPPB改変版の身体機能評価法です。
従来のShort Physical Performance Battery(SPPB)に持久力評価を加え、さらに0点項目を細分化することで、より詳細な評価を可能にしています。
本記事では、BASEの評価方法、SPPBとの違い、研究上の位置づけについて整理します。
BASEの特徴
- SPPBに歩行距離(持久力)の測定を加えた
- SPPBで0点と判定される項目を、0~0.8点に細分化した
- SPPBは0~4点、BASEは0~5点で判定
BASEという名称の由来
- B:Balance
- A:Ambulation
- S:Sit up
- E:Endurance
の頭文字を取って「BASE」と名付けられています。
BASEを解説している論文は、順天堂醫事雑誌( Juntendo Medical Journal Vol. 70 No. 1 p.2-96 Tokyo 2024. 2 )に収録されています。
SPPBは高齢者機能評価として広く用いられていますが、重症例では0点に集中しやすいという課題があります。
BASEはその点を改善する目的で開発されたと考えられます。
BASEの測定項目|SPPBとの違い
SPPBでは0点と判定される項目も、BASEでは0.2~0.8点に細分化されています。
そのため、重症例でも経過の変化をより敏感に捉えることが可能です。
BASEの測定項目|バランステスト
BASEのバランス評価は、Short Physical Performance Battery(SPPB)よりも段階的に点数が設定されています。
SPPBでは閉脚立位が10秒保持できなければ0点となる場面でも、BASEでは0.2~0.8点と細かく評価できるのが特徴です。
そのため、立位保持が困難な症例であっても、わずかな改善を数値として捉えやすく、経過観察に適した構造になっています。
重症例を多く担当する臨床現場では、この細分化は大きな意義を持ちます。
BASEのバランス評価では、SPPBには設定されていない「5点(片足立ち10秒保持)」が追加されています。
これにより、より高レベルのバランス能力を持つ対象者まで評価範囲を広げることが可能です。
片足立ちは転倒リスク評価に用いられる代表的な指標の一つであり、転倒予防を意識した身体機能評価としても臨床的意義があります。
- 5点:片足立ちが10秒できる
- 4点:タンデム立位が10秒できる
- 3点:タンデム立位が3~9.99秒できる
- 2点:セミタンデム立位が10秒できる
- 1点:閉脚立位が10秒できる
- 0.8点:閉脚立位が3~9.99秒できる
- 0.6点:開脚立位が10秒できる(支え無し)
- 0.4点:支えがあれば立位保持可能
- 0.2点:介助があれば立位保持可能
- 0点:立位保持ができない
BASEの測定項目|通常歩行テスト(4メートル)
BASEの通常歩行テストは、SPPBと同様に4メートル歩行を用いますが、点数区分がより細かく設定されています。
特に介助歩行に対しても段階的な点数が付与される点が、SPPBとの大きな違いです。
SPPBでは「歩行不可=0点」となるケースでも、BASEでは軽介助・中等度介助・重介助といった臨床的な差を数値化できます。
これにより、歩行能力の変化をより敏感に評価することが可能になります。
BASEの通常歩行テストでは、4メートルを4秒未満で歩行できた場合に5点と判定されます。
これは歩行速度に換算すると1.0m/s以上となり、日常生活を自立して送るための一つの目安とされる水準です。
一般的に、歩行速度の低下は転倒リスクや機能低下と関連すると報告されています。そのため、BASEで5点と判定される場合、歩行能力は比較的良好であり、転倒リスクは高いとは考えにくい状態といえるでしょう。
- 5点:4秒未満
- 4点:4.82秒未満
- 3点:4.82秒≦6.20秒
- 2点:6.21秒≦8.70秒
- 1点:8.70秒以上
- 0.8点:軽介助で4メートルの歩行が可能
- 0.6点:中等度の介助で4メートルの歩行が可能
- 0.4点:重介助で4メートルの歩行が可能
- 0.2点:重介助で2~3歩可能
- 0点:歩行できない
BASEの測定項目|椅子立ち上がり(5回立ち上がり)テスト
BASEの椅子立ち上がりテストは、SPPBと同様に5回立ち上がりを基本としていますが、秒数区分および低機能者への点数配分がより詳細に設計されています。
SPPBでは実施困難な場合は0点となりますが、BASEでは「1回のみ可能」「介助で可能」といった段階にも点数が付与されます。
これにより、筋力低下が著しい症例や術後早期の患者でも、機能回復の過程を数値として追跡できる構造になっています。
- 5点:<9.2秒
- 4点:<11.19秒
- 3点:11.2秒≦13.69秒
- 2点:13.7秒≦16.69秒
- 1点:>16.70秒
- 0.8点:>60秒もしくは2~5回立ち上がることができる
- 0.6点:支え無しで1回立ち上がることができる
- 0.4点:手で支えれば1回立ち上がることができる
- 0.2点:介助があれば立ち上がることができる
- 0点:立ち上がることができない
BASEの測定項目|最大歩行距離(持久力)
最大歩行距離(持久力)の評価は、BASEの最も大きな特徴です。
SPPBには持久力評価が含まれていないため、この項目が追加されたことがBASE独自の位置づけといえます。
歩行速度だけでなく、どの程度の距離を継続して歩けるかを評価することで、運動耐容能や全身持久力をより包括的に把握できます。
特にフレイルやサルコペニアを含む高齢者評価においては、機能予備能を反映する指標として重要な視点となります。
- 5点:340メートル(6分)
- 4点:180メートル
- 3点:80~179メートル
- 2点:40メートル
- 1点:15メートル
- 0.8点:4メートル
- 0.6点:車いす 30分
- 0.4点:車いす 10分
- 0.2点:ベッドの端に座ることができる
- 0点:ベッド上安静
BASEではなぜ0点細分化が必要なのか
BASEでは、SPPBでは0点と判定される領域が、0~0.8点まで5段階に細分化されています。
SPPBでは実施困難な場合は一律で0点となりますが、臨床現場では「全くできない」から「少しできる」への変化が非常に重要になる場面が少なくありません。
この細分化が特に有用と考えられるのは、以下のような場面です。
SPPBでは実施困難な場合は一律で0点となりますが、臨床現場では「全くできない」から「少しできる」への変化が非常に重要になる場面が少なくありません。
この細分化が特に有用と考えられるのは、以下のような場面です。
- 手術後、段階的に離床を進めていく過程
- 寝たきり状態から立位・歩行獲得を目指す過程
- 車いすからの卒業を目標とするリハビリテーション
- 進行性疾患やフレイル、サルコペニア症例において、わずかな機能変化を追跡したい場面
BASEの細分化構造は、その「小さな改善」を数値として可視化できる点に意義があると考えられます。
BASEとSPPBの関係
BASEとSPPBの関係は明確ではありません。Google Scholarにて、研究論文を見つけることができませんでした。
唯一見つけたのは、発表の抄録です。
👇にリンクを貼っておきますので、ご興味があればご確認ください。
現時点ではBASE独自のカットオフ値や予後予測精度に関する十分な検証は見当たりません。今後、SPPBとの相関や予測妥当性の検討が期待されます。
まとめ
BASEはSPPBを発展させた評価法として、より詳細な身体機能評価を可能にします。
今後研究が進むことで、その臨床的位置づけが明確になることが期待されます。
BASEの原典であるSPPBの点数を「臨床でどう活かすか」知りたい方へ
SPPBの点数を算出するところまではできたけれど、「この結果をどう説明すればいいか」で悩む方は少なくありません。
※SPPB結果を患者さんへフィードバックする際の考え方を、👇の記事でまとめています。
BASEの原典であるSPPBを活用したい方へ(関連ツール・解説)
目的や使用場面に応じて、以下の記事も参考になります。
※👇 フレイル・サルコペニアも含めた包括的評価をしたい方
BASEは「測って終わり」ではない
BASEは、患者さん一人ひとりの状態を把握するための大切な評価です。
しかし、評価を続けていくと、結果は自然と蓄積されていきます。
データが増えてくると、
- 「この介入は本当に適切なのか」
- 「これは偶然ではなく、意味のある変化なのか」
といった疑問が生まれてきます。
ここで必要になるのが、個人ではなく集団として評価を捉える視点です。
そのために用いられるのが、統計的な考え方や解析です。
統計は特別な人のためのものではありません。
評価を大切に積み重ねてきた人が、次の一歩を踏み出すための道具です。
👇 蓄積した評価データを解析する方法をやさしく解説しています
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本サイト「理学療法士かずの評価と統計のやさしい処方箋」は、理学療法士かずが運営しています。
臨床経験を生かしつつ、学会発表や統計の学びに役立つ記事を執筆しています。「難しそう…」を「やってみよう!」に変えるきっかけをお届けします。
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※評価結果の解釈および最終的な判断は、必ず各施設・医療職の裁量と責任のもとで行ってください。
※当ブログおよびツールは、その使用によるいかなる損害・損失についても責任を負いかねます。あらかじめご了承ください。
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