はじめに(対応のある2標本の差の検定編)
「t検定を使えばいいと思っていたけど、本当にそれで大丈夫?」
「正規性ちゃんと確認した?とか言われて、口ごもるしかなかった…」
そんな経験はありませんか?
統計を学び始めたとき、
「t検定の前に確認することがある」
と知った瞬間に、難しく感じてしまう方はとても多いです。
ですが、安心してください。
t検定はただ使うのではなく、
データの性質に合わせて使うことで、正しく意味を持つ検定です。
この記事では、EZRを使って
- 正規性の検定(Shapiro-Wilk検定)
- 対応のあるt検定
- ウィルコクソンの符号付順位和検定
を、フローチャートに沿って順番に解説していきます。
「なぜこの検定を選ぶのか」が分かるようになることで、自信を持って解析できるようになるはずです。
そもそも「対応のある」ってどういう意味?という方は、👇の記事をご覧ください。
結論(先に知りたい方へ)
- 正規性あり → 対応のあるt検定
- 正規性なし → ウィルコクソンの符号付順位和検定
迷ったらこの2つだけ覚えておけばOKです。
対応のある2標本の差の検定
対応のある2標本の差を検定する場合、まずは以下の流れで検定を選択します。
👉 ① 正規性の検定(Shapiro-Wilk検定)
→ 正規性あり → ② 対応のあるt検定
→ 正規性なし → ③ ウィルコクソンの符号付順位和検定
まずは、以下のフローチャートを見てみてください。
「なぜこの検定になるのか」が一目で分かります。
① 正規性の検定:シャピローウィルク(Shapiro-Wilk)検定
t検定を行う前に、データが正規分布に従っているかを確認します。
なぜなら、t検定は「データが正規分布に近いこと」を前提にした検定のため、事前に確認が必要です。
EZRでは、
統計解析
→ 連続変数の解析
→ 正規性の検定
の順に選択します。
この記事では一例として、
介入前後の歩行速度で見ていきます。
比較したいデータのうちの片方を選んで、OKをクリックします。
p値は下線部分を確認してください。
今回の例題ではp = 0.957 です。
p ≧ 0.05 なので、正規分布に従うと判定します。
グラフも一緒に出力されますので、必要に応じてパワーポイントに貼り付けるなどしてください。
比較したいデータのもう一方も同じように正規性の検定を行います。
次は「歩行速度後」を選びます。
p値は下線部分を確認してください。
今回の例題ではp = 0.4653 です。
p ≧ 0.05 なので、正規分布に従うと判定します。
グラフも一緒に出力されますので、必要に応じてパワーポイントに貼り付けるなどしてください。
検定結果のp値を確認し、
- 2群とも p ≥ 0.05 = 2群とも正規性あり → ② 対応のあるt検定に進む
- どちらか一方でも p < 0.05 = どちらか一方でも正規性なし → ③ ウィルコクソンの符号付順位和検定に進む
と判断します。
ここから、2群ともにp ≧ 0.05だった(正規性が確認できた)場合の次のステップについて解説します。
② 対応のあるt検定
正規性の検定で2群ともp ≧ 0.05だった(正規性が確認できた)場合、通常のt検定を使用します。
「t検定」の具体例
フレイルを疑われる透析患者10名に対して筋力トレーニングを実施してもらった。
3ヶ月後に再測定を行い、トレーニング前後で歩行速度の差を検討したい。
Shapiro-Wilk検定の結果、両群ともに正規性が確認された(p ≥ 0.05)。
そのため、2群間の比較として、対応のあるt検定を用いてトレーニング前後の歩行速度の差を検討した。
EZRでt検定を行う手順
👇の画像の通りに、
統計解析
→ 連続変数の解析
→ 対応のある2群間の平均値の比較(paired t検定)
の順に選択します。
👇解析したいデータと群を選びます。
- 第1の変数(1つ選択):比較したいデータです(画像では歩行速度前)。
- 第2の変数(1つ選択):もう一方のデータです(画像では歩行速度後)。
- それ以外はいじらず、「OK」を選択します。
👇検定結果は一番下に表示されます。
👇p値を見ます
③ ウィルコクソンの符号付順位和検定
正規性が確認できなかった場合は、
❌ パラメトリック検定であるt検定は使用せず、
🙆 ノンパラメトリック検定を選択します。
対応のある2群の場合は、ウィルコクソンの符号付順位和検定を用います。
ウィルコクソンの符号付順位和検定は、「データが正規分布でなくても使える検定」です。
「ウィルコクソンの符号付順位和検定」の具体例
Shapiro-Wilk検定で両群(または一方の群)で正規性が確認されなかった(p < 0.05)。
そのため、ウィルコクソンの符号付順位和検定を用いて2群の差を検討した。
EZRでウィルコクソンの符号付順位和検定を行う手順
👇の画像の通りに、
統計解析
→ ノンパラメトリック検定
→ 対応のある2群間の比較(Wilcoxon 符号付順位和検定)
の順に選択します。
👇解析したいデータと群を選びます。
- 第1の変数(1つ選択):比較したいデータです(画像では歩行速度前)。
- 第2の変数(1つ選択):比較したいもう一方のデータです(画像では歩行速度後)。
- OKをクリックします。
👇検定結果は一番下に表示されます。
👇p値を見ます
画像ではp = 0.13ですので、有意差なしと判定します。
EZRで対応のある2群の差を検定する方法のまとめ
EZRで対応のある2標本の差を検定する場合、以下の流れで検定を選択します。
- 正規性あり → 対応のあるt検定
- 正規性なし → ウィルコクソンの符号付順位和検定
このように、データの性質に合わせて検定を選ぶことが重要です。
⚠️注意点
ここまでご説明した「正規性の検定 → 等分散性の検定 → 差の検定」
という流れは、「多重検定」と呼ばれます。
このように複数の検定を順に行う手順については、統計的には議論のある部分もあります。
また、実際の現場や学会発表では、
- 正規性は確認した?
- 等分散性は見たの?
といった質問を受けることも少なくありません。
本記事では、そのような背景を踏まえ、
実務で求められることの多い手順として解説しています。
最後に
統計は、「正しい手順」を知るだけで、ぐっと身近になります。
フローチャートに沿って進めることで、迷わず検定を選べる状態を目指していきましょう。
評価から統計へ|EZRは臨床の延長線上にある
統計解析は、突然どこかから始まるものではありません。
すべては、日々の臨床で行っている「評価」から始まります。
私自身、SPPBのような評価を丁寧に続けてきたことが、 統計解析(EZR)へとつながりました。
評価から統計へつながる入り口としてのSPPBについては、 👇の記事でやさしく解説しています。
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