EZRで対応のある2群の差を検定する方法|t検定・ウィルコクソンをやさしく解説

2026/04/24

EZR コメディカル向け統計 統計の基本 統計初心者


はじめに(対応のある2標本の差の検定編)

「t検定を使えばいいと思っていたけど、本当にそれで大丈夫?」
「正規性ちゃんと確認した?とか言われて、口ごもるしかなかった…」

そんな経験はありませんか?

統計を学び始めたとき、
「t検定の前に確認することがある」
と知った瞬間に、難しく感じてしまう方はとても多いです。

ですが、安心してください。

t検定はただ使うのではなく、
データの性質に合わせて使うことで、正しく意味を持つ検定です。

この記事では、EZRを使って
  1. 正規性の検定(Shapiro-Wilk検定)
  2. 対応のあるt検定
  3. ウィルコクソンの符号付順位和検定

を、フローチャートに沿って順番に解説していきます。

「なぜこの検定を選ぶのか」が分かるようになることで、自信を持って解析できるようになるはずです。

そもそも「対応のある」ってどういう意味?という方は、👇の記事をご覧ください。


結論(先に知りたい方へ)

  • 正規性あり → 対応のあるt検定  
  • 正規性なし → ウィルコクソンの符号付順位和検定  

迷ったらこの2つだけ覚えておけばOKです。

対応のある2標本の差の検定

対応のある2標本の差を検定する場合、まずは以下の流れで検定を選択します。

👉 ① 正規性の検定(Shapiro-Wilk検定)

 → 正規性あり → ② 対応のあるt検定

 → 正規性なし → ③ ウィルコクソンの符号付順位和検定

まずは、以下のフローチャートを見てみてください。
「なぜこの検定になるのか」が一目で分かります。


① 正規性の検定:シャピローウィルク(Shapiro-Wilk)検定

t検定を行う前に、データが正規分布に従っているかを確認します。

なぜなら、t検定は「データが正規分布に近いこと」を前提にした検定のため、事前に確認が必要です。

EZRでは、

統計解析
→ 連続変数の解析
→ 正規性の検定

の順に選択します。



この記事では一例として、
介入前後の歩行速度で見ていきます。



比較したいデータのうちの片方を選んで、OKをクリックします。



結果は画面の一番下に表示されます。



p値は下線部分を確認してください。
今回の例題ではp = 0.957 です。
p ≧ 0.05 なので、正規分布に従うと判定します。



グラフも一緒に出力されますので、必要に応じてパワーポイントに貼り付けるなどしてください。



比較したいデータのもう一方も同じように正規性の検定を行います。



次は「歩行速度後」を選びます。



結果は画面の一番下に表示されます。



p値は下線部分を確認してください。
今回の例題ではp = 0.4653 です。
p ≧ 0.05 なので、正規分布に従うと判定します。



グラフも一緒に出力されますので、必要に応じてパワーポイントに貼り付けるなどしてください。



検定結果のp値を確認し、
  • 2群とも p ≥ 0.05 = 2群とも正規性あり → ② 対応のあるt検定に進む

  • どちらか一方でも p < 0.05 = どちらか一方でも正規性なし →  ウィルコクソンの符号付順位和検定に進む

と判断します。

ここから、2群ともにp ≧ 0.05だった(正規性が確認できた)場合の次のステップについて解説します。

② 対応のあるt検定

正規性の検定で2群ともp ≧ 0.05だった(正規性が確認できた)場合、通常のt検定を使用します。

「t検定」の具体例

フレイルを疑われる透析患者10名に対して筋力トレーニングを実施してもらった。
3ヶ月後に再測定を行い、トレーニング前後で歩行速度の差を検討したい。
Shapiro-Wilk検定の結果、両群ともに正規性が確認された(p ≥ 0.05)。
そのため、2群間の比較として、対応のあるt検定を用いてトレーニング前後の歩行速度の差を検討した。

EZRでt検定を行う手順

👇の画像の通りに、

統計解析
→ 連続変数の解析
→ 対応のある2群間の平均値の比較(paired t検定)

の順に選択します。



👇解析したいデータと群を選びます。
  • 第1の変数(1つ選択):比較したいデータです(画像では歩行速度)。
  • 第2の変数(1つ選択):もう一方のデータです(画像では歩行速度)。
  • それ以外はいじらず、「OK」を選択します。



👇検定結果は一番下に表示されます。



👇p値を見ます



※ グラフをパワーポイントに貼り付けて編集する手順は👇の記事で解説しています。


③ ウィルコクソンの符号付順位和検定

正規性が確認できなかった場合は、
❌ パラメトリック検定であるt検定は使用せず、
🙆 ノンパラメトリック検定を選択します。

対応のある2群の場合は、ウィルコクソンの符号付順位和検定を用います。

ウィルコクソンの符号付順位和検定は、「データが正規分布でなくても使える検定」です。

「ウィルコクソンの符号付順位和検定」の具体例

Shapiro-Wilk検定で両群(または一方の群)で正規性が確認されなかった(p < 0.05)。
そのため、ウィルコクソンの符号付順位和検定を用いて2群の差を検討した。

EZRでウィルコクソンの符号付順位和検定を行う手順

👇の画像の通りに、

統計解析
→ ノンパラメトリック検定
→ 対応のある2群間の比較(Wilcoxon 符号付順位和検定)

の順に選択します。



👇解析したいデータと群を選びます。
  • 第1の変数(1つ選択):比較したいデータです(画像では歩行速度)。
  • 第2の変数(1つ選択):比較したいもう一方のデータです(画像では歩行速度)。
  • OKをクリックします。



👇検定結果は一番下に表示されます。



👇p値を見ます
画像ではp = 0.13ですので、有意差なしと判定します。



※ グラフをパワーポイントに貼り付けて編集する手順は👇の記事で解説しています。


EZRで対応のある2群の差を検定する方法のまとめ

EZRで対応のある2標本の差を検定する場合、以下の流れで検定を選択します。
  • 正規性あり → 対応のあるt検定
  • 正規性なし → ウィルコクソンの符号付順位和検定

このように、データの性質に合わせて検定を選ぶことが重要です。

⚠️注意点

ここまでご説明した「正規性の検定 → 等分散性の検定 → 差の検定」
という流れは、「多重検定」と呼ばれます。

このように複数の検定を順に行う手順については、統計的には議論のある部分もあります。
また、実際の現場や学会発表では、
  • 正規性は確認した?
  • 等分散性は見たの?

といった質問を受けることも少なくありません。

本記事では、そのような背景を踏まえ、
実務で求められることの多い手順として解説しています。

最後に

統計は、「正しい手順」を知るだけで、ぐっと身近になります。

フローチャートに沿って進めることで、迷わず検定を選べる状態を目指していきましょう。

評価から統計へ|EZRは臨床の延長線上にある

統計解析は、突然どこかから始まるものではありません。
すべては、日々の臨床で行っている「評価」から始まります。 

私自身、SPPBのような評価を丁寧に続けてきたことが、 統計解析(EZR)へとつながりました。 

評価から統計へつながる入り口としてのSPPBについては、 👇の記事でやさしく解説しています。


運営者プロフィール

本サイト「理学療法士かずの評価と統計のやさしい処方箋」は、理学療法士かずが運営しています。

臨床経験を生かしつつ、学会発表や統計の学びに役立つ記事を執筆しています。
「難しそう…」を「やってみよう!」に変えるきっかけをお届けします。


🔗 関連記事





※当サイトで紹介している手順・構成・テンプレートは、筆者のこれまでの経験に基づいた一例です。
※本サイトの情報を利用したことによる不利益・損失については、一切の責任を負いかねます。予めご了承ください。
※なお、掲載内容はなるべく最新の情報に基づいて更新しておりますが、正確性・完全性を保証するものではありません。

QooQ